「超高齢化社会、待ったなし」の日本。長寿者を敬う文化がある一方で、当事者としての加齢にはネガティブな考えが付きまとうこともあります。本記事では老年心理学者の権藤恭之氏が、世界最長寿のフランス人女性のエピソードや実際に出会った100歳を超える男性の日常生活をご紹介します。
人は何歳まで生きるのか?「世界最長寿者」女性は122歳のフランス人、男性は111歳の日本人…“超高齢者”の日常【大学教授が解説】
これまでの世界最長寿者は、フランスの女性で122歳
人間はいったい何歳まで生きることができるのでしょうか? これまでの世界最長寿者はジャンヌ=ルイーズ・カルマンさんで、122歳と164日です。フランスの女性で1875年に生まれ、1997年に亡くなっています。一方、男性の世界最長寿者は116歳と54日の木村次郎右衛門さんで、1897年に生まれ2013年に亡くなりました。
このふたりについては研究者による調査データが残っていますが、認知機能の衰えはなかったという結果が出ています。
カルマンさんはアルルに住んでいて、そこに滞在していたフィンセント・ファン・ゴッホが親族の営む画材店に絵具と鉛筆を買いに来たということを覚えており、世界的に話題となりました。また、カルマンさんは100歳まで自転車に乗っていて、114歳で大腿骨を骨折するまで歩くことができました。長寿の秘訣は大好きなチョコレートを食べて赤ワインを飲むことだったそうです。
私がカルマンさんの話を聞いて長生きは悪くないと思ったことがあります。「リバースモーゲージ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本でも少し知られるようになりましたが、これは自分が住んでいる家を担保にお金を借りることができるシステムで、彼女はその契約を地元の人と結んでいたのです。細かいところは知りませんが、死んだら不動産を接収してもよい、しかし、生きている間は生活費を支払ってもらうということが条件だったと記憶しています。
でも予想以上に長生きするとどうなるか、想像できるでしょうか。カルマンさんが長命だったために、相手のほうが先に亡くなってしまい、その契約が息子に引き継がれたそうです。そして、彼女の生涯の生活費はその契約をもとに支払われたとのことでした。
早起きは三文の得といいますが、長生きは億万の得というところでしょうか。この話を聞いて私も長生きしようと思いました。彼女は凍った水道管の氷を溶かそうとして地下室でボヤ騒ぎを起こした後、施設で最晩年を過ごしたのですが、その最晩年の様子はほとんど知られていません。