「超高齢化社会、待ったなし」の日本。長寿者を敬う文化がある一方で、当事者としての加齢にはネガティブな考えが付きまとうこともあります。本記事では老年心理学者の権藤恭之氏が、世界最長寿のフランス人女性のエピソードや実際に出会った100歳を超える男性の日常生活をご紹介します。
人は何歳まで生きるのか?「世界最長寿者」女性は122歳のフランス人、男性は111歳の日本人…“超高齢者”の日常【大学教授が解説】
男性の世界最長寿者は日本人。気になる日常生活は?
男性の世界最長寿者である木村さんは京都府に生まれ、郵便局の仕事に就き、退職後は畑仕事をしていました。晩年は朝5時に起床し、午後8時に就寝するという規則正しい生活を続け、食生活では朝にヨーグルト、サツマイモ、梅干しを、夜に牛乳を摂ることを習慣としていました。
私は木村さんとは5回会って、さまざまな話を聞きました。初めて会ったのは木村さんが111歳の時でしたが、とてもお元気でした。木村さんは慶應義塾大学が105歳以上の人の調査を行っているという記事を読んで、自分から連絡をくれたのです。京都府北部の京丹後市に住んでいたので、私は東京から伊丹空港、コウノトリ但馬空港と飛行機を乗り継いで、そこから車でお宅を訪問しました。
木村さんは耳が遠く、老眼も進んでいたので認知機能テストはうまくできませんでしたが、畳の間に背筋をピンと伸ばして正座する姿が非常に印象的でした。はきはきと質問に答え、自分の人生を小冊子にまとめていたこともあり、記憶も細部にわたっていました。
この時は一緒に研究をしている慶應義塾大学医学部の広瀬信義先生に同行したのですが、インタビュー終了後、私は広瀬先生に「こんなに元気な111歳がいるわけがない。きっと年齢を偽っているに違いない」と話したのを覚えています。
その後、私は戸籍だけでなく、国会図書館で地域の資料を探したりして、結局、小学校の卒業者名簿に木村さんの名前が記載されていたことにたどり着いて、生年月日が正しいものであることを確認しました。
生年月日を検証するために、他にも木村さんが話したことを細かく調べたことがあります。結婚した時にはまだ家まで電気が通っていなくて、蠟燭の明かりで夜を迎えたという話でした。ただ近いうちに電線の設置されることが決まっており、すでに電灯の配線は終わっていたといいます。
いろいろ調べて、正確に電線が設置された年月日はわかりませんでしたが、この地域に電気を配給するためのダムが結婚の年に稼働開始していたので、話の内容は正しいと考えることができました。
老年心理学者
権藤 恭之