日本人のおよそ2人に1人はがんになるといわれる昨今、自分や家族ががんを罹患した場合の対処法を事前に把握しておくことが大切です。そこで、 勝俣範之氏の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、治療前に必要な準備を紹介します。
自分や家族が「がん」になったら…時間を無駄にしないための〈治療前の準備〉とは?【医師が解説】
勤務先の就業規則で休職制度を要チェック
勝俣:手術などの治療によっては、会社を休まなくてはならない場合がありますが、がんでは、長く休職するケースも起きてくる可能性があります。
O:病気による休職がどういった規則になっているのか、どんな手続きが必要なのか、よくわかっている人は、もしかしたら少ないかもしれませんね。
勝俣:そこで注目してほしいのが、就業規則です。
O:就業規則というと、労働時間とか、賃金とかについて書かれているものですよね。
勝俣:はい。働く人が安心して働くことができるよう、職場の環境を整えたり、制度を定めたりすることは、会社や事業主に課せられた義務です。その内容についてまとめられたものが、就業規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、それを作成して従業員に周知することが法律で義務づけられています。
O:病気による休職などに関しても記載されているのですか?
勝俣:通常はそうです。ですから、がんで会社を休まなくてはならなくなったときなどは、まずはその就業規則を確認していただきたいと思います。
一般的に、業務によるものではない病気やケガで従業員が働けなくなったときに、すぐに従業員を解雇するのではなく、一定期間休んで治療や療養をしてもらい、再び働けるようになってもらう目的で用意されているのが私傷病休職と呼ばれるものです。その内容や期間は、会社によってマチマチです。私が治療した方ですが、白血病で2年間休職したあとに職場に戻ったという外資系勤務の方もいました。
O:わかりました。まずは就業規則を確認することが大切なのですね。
勝俣:休職に限らず、通院のための時間単位の有休制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度などを設けていることもあります。そうしたところも細かくチェックしてほしいと思います。もちろん、休職中の給与などについても確認してください。会社の制度の主な確認項目については、[図表2]を参考にしてください。
勝俣 範之
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科
教授/部長/外来化学療法室室長