パリ五輪が7月26日(現地時間)に開幕しました。夏季競技の中でも注目の「水泳」は8月4日(現地時間)に競技最終日を迎え、メダル獲得最多となったのはアメリカで28個を獲得。日本からも、カムバックを果たした池江璃花子選手や、本田灯選手、大橋悠依選手が出場しました。そんな選手たちの活躍を支えるのが競泳水着のテック。水面下で選手たちを支える競泳水着の進化とテックについてお届けします。
パリ五輪開幕! 注目の水泳を水面下で支える競泳水着テック (※写真はイメージです/PIXTA)

流水抵抗を極限まで低減させたトップ選手用水着

「ファストスキンレーザーレーサーピュアグリント」メインビジュアル
「ファストスキンレーザーレーサーピュアグリント」メインビジュアル

水泳大国、オーストラリアで誕生し現在はイギリスに本拠地を置くスピードは、2024年3月に8年ぶりとなるトップ選手用水着を発表。日本人選手により適した水着を開発するため、本国のモデル「ファストスキンレーザーレーサーピュアヴァラーファストスキンレーザーレーサーピュアヴァラー」をモデルに、「ゴールドウイン テック・ラボ」で3年間の研究の後、「ファストスキンレーザーレーサーピュアグリント」が誕生しました。日本人の体型に合わせたことでよりフィット感も増し、水の侵入を防御。縫製を極力控えシームテープによる接合を行い、凹凸のないフラットな仕上がりに。そんな工夫の積み重ねにより流水抵抗を極限まで低減させています。

撥水性ではなく親水性で勝負した水着

「ゼロポジションAURORA」を着用したスイマーのイメージ(山本化学工業提供)
「ゼロポジションAURORA」を着用したスイマーのイメージ(山本化学工業提供)

前述した「たこ焼きラバー」の山本化学工業も、パリ五輪に向けて新素材「SCSファブリック」を開発したと3月に発表しました。従来品の85分の1まで水との摩擦抵抗係数を軽減することで、泳ぐ人の推進力を最大限活かし、ストローク数を最小限に抑えています。また、着用感にもこだわり、体を包み込むような安心感があるのだとか。さらにとても興味深いのは、他社製品のような「撥水性」ではなく、常識を覆す特殊な「親水性」を有していることです。SCSファブリックに直接水分子の膜が張り、その上を水が限りなくゼロ抵抗で流れていくのです。世界の水着メーカーへ供給がスタートしています。

親水性の機能(山本化学工業提供)
親水性の機能(山本化学工業提供)

 

ちなみにトップ選手向けの水着ですが、一般でも購入することができます。技術の粋が結集されているだけあって、価格は3〜4万円台です。

今大会も大きな期待がかかる日本競泳陣。TV観戦するときにはぜひ、どんな水着を着用しているかにも、今一度注目してみるとより五輪が面白くなるかもしれません。


【プロフィール】
有馬美穂
ライター。2004年早稲田大学卒業。『VERY』をはじめ、さまざまな雑誌媒体等で主にライフスタイル、女性の健康、教育、ジェンダー、ファッションについての取材執筆を行う。