パリ五輪が7月26日(現地時間)に開幕しました。夏季競技の中でも注目の「水泳」は8月4日(現地時間)に競技最終日を迎え、メダル獲得最多となったのはアメリカで28個を獲得。日本からも、カムバックを果たした池江璃花子選手や、本田灯選手、大橋悠依選手が出場しました。そんな選手たちの活躍を支えるのが競泳水着のテック。水面下で選手たちを支える競泳水着の進化とテックについてお届けします。
パリ五輪開幕! 注目の水泳を水面下で支える競泳水着テック (※写真はイメージです/PIXTA)

本多灯選手も着用予定! 内股のねじり構造でキックを効率的に

デサントジャパンの「アリーナ」ブランドでは、パリ五輪まで1年を切った2023年8月に新型水着を発表。オリンピックに向け、実に4年をかけ開発されました。「アクアフォース ストーム」と名付けられた競泳用トップモデル水着は、渦を巻くような内股のねじり構造により、ダウンキック時に効率よく水を捉えます。

内股のねじり構造(デサントジャパン提供)
内股のねじり構造(デサントジャパン提供)
 
 

泳いで前に進むためには、キックは欠かせないものです。このキックを効率的・効果的に行わなければ、早く泳ぐことはできません。推進力のあるキックには股関節を内旋(内側に捻る)することが大切なのですが、このアクアフォース ストームは、独自の設計でダウンキックする際、股関節を内旋方向へサポートする力が働きます。また身頃を一枚の布で作り、切り替え部分を極力無くし、生地の伸縮性を担保しています。一枚布で作ることで、水を含んで重くなってしまう糸の使用量も減らすことができます。力強いキックで注目される本多灯選手は、デサントジャパンとアドバイザリー契約を結んでおり、パリ五輪でもデサントの「アリーナ」ブランドを着用しました。

さらにトップ選手たちは水着だけでなく、ゴーグルにも当然こだわりがあり、水の抵抗を避けるため「薄さ」が大切にされています。2023年8月に発表されたアリーナのトップ選手用ゴーグルは、やはりその薄さが特徴。トップ選手用のゴーグルは、薄さを追求するためにクッションパッドのないものも展開されるほどですが、「アクアフォース スイフトエース」は、ずれにくくするためパッドを装備しつつ、レンズの厚みを極限までカットしています。

「ARENA FIREFLOW」デザインのアクアフォース ストーム(デサントジャパン提供)
「ARENA FIREFLOW」デザインのアクアフォース ストーム(デサントジャパン提供)

ハスの葉の構造がヒントに…池江璃花子選手着用の水着

池江選手はミズノを着用。ミズノはデサントと同じく2023年8月に、新作水着を発表しました。ミズノが誇るトップ選手向け競泳用水着は「ジーエックス ソニック シックス」。このジーエックスシリーズは、高速水着の衝撃冷めやらぬ2011年、水の抵抗が少なく、推進力を発揮しやすい水中姿勢である「フラットスイム」をコンセプトに開発されました。ラバー水着により、フラットスイムの有用性が意識された結果かもしれません。

「ジーエックス ソニック シックス」メインビジュアル(ミズノ提供)
「ジーエックス ソニック シックス」メインビジュアル(ミズノ提供)

この最新型も、一本一本の糸にまでこだわることで撥水性を向上。この生地は、ハスの葉の構造をヒントにして表面に凹凸を持たせています。また原糸を特殊なスリット形状に加工することで空気を取り込み、水との接触面積が減少。動いても糸が浸水しにくくなりました。こうして従来のモデルよりも水中軽量化を実現させることでより高いポジションを保つことができ、効率のいい泳ぎをサポートするのだそう。

ミズノ提供
ミズノ提供

また、必需品のキャップにも工夫が。ミズノのジーエックスシリーズのキャップは、頭頂部に突起をつけることで整流効果を生み出し、流水抵抗を役4.8%低減できたといいます。