※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
成長する宇宙ビジネス
「宇宙ビジネス」という言葉をご存知でしょうか。
AI(人工知能)や半導体ほどではないにせよ、書店に行くとかなりの数の本が並んでいるなど、盛り上がりを見せているビジネス・ジャンルです。モルガン・スタンレーの報告書「Space: Investment Implications of the Final Frontier」(宇宙:最後のフロンティアへの投資インプリケーション)は、宇宙ビジネスの市場規模は2016年の3,391億ドルから2040年には1兆1,039億ドルへと大きく成長すると予測しています。
いったい宇宙でどのようなビジネスができるのでしょうか? 私たちにとってなじみがあるのは衛星テレビや気象衛星による天気予報でしょう。また、日本でもサービスが始まった衛星インターネット、あるいは企業家の前澤友作氏が話題となった宇宙旅行が思い浮かびます。宇宙旅行なんてSFの世界の話のようですが、ブルーオリジンやスペースXなどの宇宙ベンチャーはすでにこの夢を実現しています。
といっても、旅行は巨大な宇宙ビジネスのほんの一部に過ぎません。前述のモルガン・スタンレーの報告書は2040年の宇宙ビジネスの用途別の内訳を以下のように予測しています。
・通信網 4,120億ドル
・地上設備 2,140億ドル
・政府関係 1,810億ドル
・テレビ 1,030億ドル
・衛星ブロードバンド 850億ドル
・その他 1,090億ドル
最大の価値を生み出すジャンルは通信です。前述したような、庭にアンテナを置くだけでパソコンやスマートフォンを使ったデータ通信が可能となる衛星ブロードバンドもインパクトがありますが、現在海底ケーブルが担っている国を超えた大容量のデータ通信も一部が衛星経由に代替される可能性があります。
また、低価格で高精度の測位データや観測データがもたらされることによって、新たな産業を生み出す基盤になることが期待されています。自動車の自動運転、ドローンを使った配送やインフラ点検のためには測位データの精度はきわめて重要です。また、観測データの向上によって航空機に頼らずとも、地表の正確かつリアルタイムな観測が可能になります。防災、環境対策、あるいは固定資産税の調査などなど、活用範囲は広大です。
特にキモとなるのはリアルタイムという点。これまでは人工衛星の数が少なかったため、ちょうど目標地点の上空を通過している間しか観測できませんでしたが、宇宙ビジネスが発展し無数の衛星が飛び回るようになると、24時間フルタイムで観測できるようになるのです。