「念入りな本人確認」「鉛筆書きで一言添えた稟議書」…あるあるも満載

大企業のサラリーマンものという要素のほかに、各業界やビジネスの場で実際に行われている手続きややり取りも「あるある」が詰め込まれている。例えば、稟議書承認のシーン一つとっても「後から消せるように鉛筆書きで稟議書に一言添える」だったり、土地の売買交渉における本人確認で「免許証や本人確認書類を司法書士が徹底的に調べる」であったり、何気ない「業務」が、その世界や業界を知る者にとっては「あるある」の一方で、知らない者にとっても「こういう手続きを踏むのね」「こういうことをやっているのか」と新鮮に映るのだ。

実際に司法書士の間でも同作品は話題になっているという。話を聞かせてくれた司法書士の男性は「2017年の事件もあって、司法書士業界では、なりすまし、本人確認に関しての注意喚起が強くされており、このドラマにも自分たちの仕事と大きく関係する内容が登場するため、ドラマ内の司法書士の業務の進め方、対応が話題になっております」と話す。

ドラマの中では、土地の売り手側である地主の本人確認で干支を聞かれるシーンが何度も登場するが、「印鑑証明書と捺印書類の印影の照合や、住所、氏名、生年月日、干支等の口頭での確認は、決済会場での書類の確認時に実際に行います。免許証をライトで当てたり、データを読み込んだりする場面もありますが、一部の司法書士で行っている方がいるかもしれませんが、ほとんどの司法書士は本人確認書類を目視して終わります」とリアルな声を寄せた。

(C)新庄耕/集英社
(C)新庄耕/集英社

大根監督「リアリティとファンタジーのバランス」を意識

ドラマでは地面師たちが「リー ダー」ハリソンを筆頭に「交渉役」の拓海(綾野さん)、「情報屋」の竹下(北村さん)、「手配師」の麗子(小池さん)、「法律屋」の後藤(ピエールさん)、偽装書類を作成する「ニンベン師」の長井(染谷さん)がチームを組み用意周到に計画を実行していくが、彼らが詐欺で使う偽造書類や免許証やパスポートなどは実際に「完璧に偽造しました」(大根監督インタビューより)という。

そんなふうに美術や小道具、ロケ地にかなりこだわりリアリティを追求する一方で、大根監督が「今回は嘘をつくところは徹底して嘘をつきましたね。特に地面師チームの描写とか。そういうリアリティとファンタジーのバランスにいちばん気を使ったんじゃないかと思います」とも。リアルとファンタジーの絶妙なバランスがエンタメ作品としての完成度を高めている要因の一つと言える。