再婚が30年で4割増加している

最近、二つの家庭を持つ男性が増えています。まず一つ目は離婚した家庭。前妻との間の子どもに対して毎月、養育費をせっせと払っています。次に二つ目は再婚した家庭。現妻との間の子どもを育てています。

芸能人をイメージすると分かりやすいでしょう。例えば、故・千葉真一さんと前妻・野際陽子の子どもは真瀬樹里さん。現妻(一般人)の子どもは新田真剣佑さん、眞栄田郷敦さんです。また石田純一さんと前々妻の子どもはいしだ壱成さん、前妻・松原千明さんとの子どもはすみれさん、そして現妻(東尾理子さん)の子どももいます。この傾向は芸能人だけの話ではなく、一般人も同じです。

厚生労働省の人口動態統計によると2022年の再婚(夫婦どちらか、もしくは両方が再婚。127,126組)は婚姻全体(504,930組)の25.1%。1992年の再婚は132,689組、婚姻全体は754,441組で再婚の割合は17.5%でした。全体に占める割合は30年で4割近く増えています。

しかし、男性にとって家庭は二つでも、財布は一つです。十二分のギャラを得ている芸能人はともかく、そこそこの給料しか得ていない一般人は「何もしなければ」二つの家庭を維持するのが難しくなります。今回の相談者・北島悠介さん(56歳)も前妻への養育費の支払が厳しくなった一人です。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、離婚の経緯や養育費、再婚のきっかけなどは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

56歳会社員・悠介さんのケース

<登場人物(年齢は相談時点。名前は仮)>

夫:北島悠介(56歳。会社員。年収800万円)☆今回の相談者

現妻:北島美愛(24歳。専業主婦)

現妻の子:北島美紅(0歳)

前妻:寺田綾香(52歳。職業不明、年収不明)

前妻の子:寺田利人(16歳)

「お恥ずかしい話ですが」と前置きした上で「この歳で子どもを授かりまして……養育費の払いが苦しくて何とかしたいのです」と苦しい胸のうちを打ち明けます。

悠介さんは9年前に離婚。前妻が長男を引き取り、悠介さんは毎月9万円の養育費を長男が成人するまで支払うことを約束しました。

このように前配偶者に対して支払う養育費、慰謝料、解決金などのことを「離婚債務」といいます。今まで一度も欠かさず、長男の口座へ振り込んできたのは悠介さんの年収が800万円で、余裕こそないけれど、生活に事欠かなかったからです。

しかし、当時交際していた彼女(24歳)の妊娠で状況が一変。彼女にとって悠介さんは同じ部署の直属の上司でした。悠介さんは責任をとる形で彼女と再婚したのです。前述の統計によると夫が再婚、妻が初婚のというカップルは、結婚全体(50.4万組)の9%(4.6万組)です。

彼女はそれをきっかけに退職。悠介さんは赤子のオムツ、ミルクの出費が上乗せされ、さらに専業主婦になった現妻を養わなければならなくなりました。悠介さんの手取りは毎月42万円。糖尿病を患っている悠介さんは毎月2万円の医療費がかかっており、ついに家計の収支が4.5万円の赤字に陥ってしまったのです。

悠介さんが筆者の事務所へ相談しに来たのはにっちもさっちもいかなくなったタイミングでした。

<毎月の家計収支>

家賃 110,000円

水道光熱費 30,000円
食費 60,000円
自動車ローン 30,000円
自動車保険 6,000円
ガソリン代 14,000円

妻の大学奨学金返済 15,000円
医療費 20,000円

携帯代 22,000円
医療保険 16,000円
日用品 10,000円
雑費 30,000円

オムツ、ミルク 12,000円

養育費 90,000円

約465,000円

悠介さんが前妻と離婚できたのは別居3年目のことでした。悠介さんがいくら「別れてくれ」と頼んでも、前妻は無視を決め込み、離婚調停を申し立て、裁判所内でようやく決着したという経緯があります。

前述の統計によると2023年の離婚件数は183,814人。一方、結婚件数は474,741人なので3組に1組は離婚する計算です。そのため、夫婦が離婚すること自体は珍しくはないのですが、悠介さんは離婚後、前妻とほとんど連絡をとっていませんでした。