2017年の不動産詐欺事件をきっかけに知られるようになった「地面師」とは?

2019年に刊行された新庄耕さんの小説『地面師たち』(集英社)を『モテキ』や『エルピス‐希望、あるいは災い』などで知られる大根監督がドラマ化。地面師グループと大手デベロッパー、地面師グループを追う刑事の三つ巴の争いを描く。

「地面師」とは、他人の土地の所有者になりすまして売却を持ちかけ、偽造書類を使って多額の代金を騙し取る、不動産詐欺を行う集団を指し、2017年に東京都品川区五反田の土地をめぐる不動産詐欺事件が広く報道されたことをきっかけに知られるようになった。

地面師詐欺は、戦後間もない混沌とした社会情勢や、役所内の混乱期に全国で発生。バブル時代には、土地の価格が高騰し、都市部を中心に多発。だがその後、不動産取引に必要な書類の電子化が進んだことによって、他人のなりすましが困難になり、鎮静化したように見えた。しかし2010年代半ば、東京オリンピック招致決定を機に、土地の価格が上昇。管理の行き届かない土地や、所有者の不在など、表面化しにくい土地を中心に、再び地面師事件が発生するようになった。

ドラマでは、過去の出来事によってすべてを失いながら、ある男との出会いをきっかけに「地面師」の道を歩むことになった「辻本拓海」を綾野剛さんが、拓海をアウトローの世界へと招き入れる謎の大物地面師「ハリソン山中」を豊川悦司さんがダブル主演で演じているほか、北村一輝さん、小池栄子さん、ピエール瀧さん、染谷将太さんがハリソン率いる地面師グループのメンバーとして脇を固める。

一方、上記の地面師グループにだまされる側である大手デベロッパー「石洋ハウス」の幹部を山本耕史さん、ハリソンを追う定年間近の刑事をリリー・フランキーさん、新人刑事を池田エライザさんが演じ、「だます側」と「だまされる側」、そして地面師グループを追う側の“三つ巴の争い”が大きな見どころだ。

(C)新庄耕/集英社
(C)新庄耕/集英社

まるで「日曜劇場」!? 企業ものとしても楽しめる仕掛け

公式インタビューで大根監督は「いつかドラマでも映画でも、ジャンルを混ぜ合わせたものを作りたいと思っていた」と話し、「詐欺師グループにだまされる大手デベロッパー側の描写が、実はポイントなんじゃないかと思った」と明かしているが、確かに、同作品では地面師たち側だけではなく、会長派と社長派に分かれた派閥争いや、やたら時間がかかる稟議書承認の描写など、TBSの「日曜劇場」で描かれるような大企業で働くサラリーマンの世界も丁寧に描かれる。

冒頭の金融機関出身の男性も「あそこまでの大型案件ってもっと時間をかけてしっかり交渉しなければいけないのに、(地面師たちに急かされて)急がなければいけない理由に派閥争いという要素も加わって非常にリアルだなあと。(山本さん演じる)青柳のパワハラの感じも昭和のサラリーマンというかちょっと前のサラリーマンを彷彿とさせますよね」と話す。

(C)新庄耕/集英社
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