遺族厚生年金の概要

遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者が死亡したときや、老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したときなどに、その遺族に支給されます。

遺族厚生年金の額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は加入月数(厚生年金の被保険者期間)が多いほど増えますが、加入月数が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算してくれます。ちなみに、妻への遺族厚生年金の平均額は84,012円となっています(2023年7月28日「第6回社会保障審議会年金部会」資料)。

遺族の範囲をみてみると、配偶者や子だけではなく、孫や父母、祖父母も対象です。なお、子や孫には要件があり、18歳になった年度の3月31日までにあるか、20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にあることが必要です。

【遺族厚生年金の遺族】
死亡した方に生計を維持されていた次の遺族

①子のある妻、または子
②子のない妻  ※夫の死亡時に30歳未満であれば5年間の有期給付
③孫
④死亡当時55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から)


※遺族基礎年金の支給対象となっている夫の遺族厚生年金は55歳から支給される

先にみたとおり、現行の遺族厚生年金には男女差が設けられています。遺族厚生年金を受給するに当たり妻には年齢制限がない一方、夫は55歳以上であることが必要です。しかも、夫が受給できるのは原則60歳からです。遺族年金制度の特徴である「男性が主たる家計の担い手である」という考え方が色濃く反映されているといえるでしょう。

具体的な見直し案は?

今回、子のない妻に関する遺族厚生年金の見直しが図られています。子のない妻の場合、現行制度では、夫の死亡時に30歳未満であれば遺族厚生年金は5年間の有期給付となりますが、見直し案では有期給付の対象年齢を段階的に引き上げていきます。

【図表1】

年齢制限が設けられている夫に関しては、新たに60歳未満の夫を有期給付の支給対象とすることが示されています。

【図表2】

なお、養育する子がいる世帯、高齢期の夫婦及び既に受給権が発生している方への遺族厚生年金については、現行制度の仕組みが維持されるとしています。