高齢者の4割が「年金への依存度100%」
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、「総所得に占める年金の割合が100%」という年金生活者は、全体の41.7%。「80~100%」は17.9%、「60~80%」が13.9%。ここまでの合計で7割超え。高齢者のどれだけ年金を頼りに生活しているかが分かります。
一方、高齢者の1ヵ月の支出は14万~15万円。老齢厚生年金の平均額が14万円強で、65歳男性に限ると17万円弱。税金や保険料を引いた手取りとなると、ギリギリ年金だけで生活できるかどうか、という金額です。「できることなら、年金の受取額を増やしたい」と考えるのも当然です。
そこで利用する人も多いのが「年金の繰下げ受給」。これは原則、65歳からとなっている年金受給を後ろ倒しにすることで、その分、増額した年金がもらえるという制度。内閣府『生活設計と年金に関する世論調査』によると、「年金の受取時期が選択できること」の認知度は73.0%。年金の繰下げ受給は、よく知られた年金制度のひとつといえるでしょう。
年金の繰下げ受給、66歳から75歳まで受取り開始時期を選べ、1ヵ月遅らせるごとに、受取額は0.7%増額。1年で8.4%、3年で25.2%、5年で42.0%……10年で84.0%と、65歳で年金の受給を始めるのと比べると、月の受取額は約2倍に。年金の受取り開始を遅らせる分、生活費に余裕がでるというわけです。
前出の世論調査で「いつまで働きたいか」と尋ねたところ、「66~70歳」が21.5%、「71~75歳」が9.2%、「76~80歳」が4.3%、「80歳以上」が2.6%。年金受取開始年齢である65歳以降も働きたいという人たちは4割弱に達します。「給与があるなら、年金の受取りはあとでもいいか」と年金を請求しなければ、自然と月にもらえるお金は増えるわけです。
もちろん、ものごとメリットもあればデメリットといえる側面も。よくいわれるのは、「受給期間によっては、65歳で受取り開始したほうがトータルではお得になる」「年金額が増える分、税金や社会保険料の負担が大きくなる」「加給年金や振替加算が受け取れなくなる」という3点。これらのデメリットもきちんと把握したうえで、自身にメリットがあるかないかを検討することが重要です。