日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、国民年金に加入することが義務付けられています。そのうち、自営業者や農業者、学生、無職の人は第一号被保険者として国民年金保険料を納めなければなりません。将来の年金は少なくても構わないから…と、国民年金保険料を滞納し続けた自営業の伊藤博さん(51歳)のもとに、国から赤い封筒が届きました。この封筒の中身はいったい何だったのでしょう? 今回は伊藤さんを例に、赤い封筒の正体ととるべき行動について南真理FPが解説します
「こんなこと両親に知られたら…」“楽勝の老後”が約束されていた51歳元会社員、年金機構から届いた「赤い封筒」に戦慄【FPが警告】
「自分だけでなく親にまで影響が?」財産の差押えに震え
赤い封筒に書かれた「財産の差押え」の準備を始めるという内容に驚き、慌てて知り合いのファイナンシャルプランナー(FP)に相談に行った伊藤さん。FPはなぜ国民年金保険料を滞納し続けたのか尋ねました。
「そもそも年金を必ず払わなければいけないものという認識が低く、国民年金保険料が想定以上に高いなと思って放置してしまいました……。実家が不動産業を営んでいるので、将来、親の不動産を相続すれば、不動産収入がもっと入ってくるし、年金に頼らなくてもいいかなと思ったんですよ」と、年金への意識が低かったことを正直に話しました。
伊藤さんは現在、実家の不動産業の手伝いをしており給与として年500万円ほど受け取っています。将来、父である邦夫さんの不動産を相続するとなると、不動産収入が年1,500万円ほどになると父から聞かされていました。それもあってか、自営業になってからの国民年金保険料は払わなくてもいいかという考えに至ってしまったそうです。
FPは、差押え対象の財産は、給与や預貯金、所有する不動産などに及ぶことを説明しました。しかも、仮に預金が差押えられた場合、未納になっている金額だけではなく、口座の預金全体が差押えられ、未納分を支払うまで預金を引き出せなくなってしまうことを伝えました。
さらには、納付義務者と連帯して世帯主や配偶者の財産も差押えられる可能性があることを説明したところ、伊藤さんの顔色が蒼白になっていきました。伊藤さんは現在、父母と同居しており、父邦夫さんが世帯主となっているからです。
FPの説明を聞いたあと、伊藤さんは「こんなことを両親に知られるわけにはいかない」と、大急ぎで1年分の夫婦2人の年金約40万円を年金事務所に納めに行きました。