2011年にJINSが開発・発売したブルーライトカットメガネが大ヒットを記録して以降、PCやスマホの使用頻度が高い人たちの間で定番アイテムとして愛用されてきました。ところが、「ブルーライトカットメガネには効果がない、むしろ子どもには悪影響を与える可能性がある」というメディア報道が流れたことで、その効果に疑問を持つ人も増えているようです。そこで今回は、眼科医の窪田良氏の著書『近視は病気です』(東洋経済新報社)より一部を抜粋し、ブルーライトカットメガネに関する見解をご紹介していきます。
光量を減らすという意味では嘘ではないが…
米国眼科学会ではブルーライトをカットするメガネには十分なエビデンスがないということで推奨していません。ただ、ブルーライトカットメガネをかけると目に入る光の量は減ります。私たちは目に強い光が入ってくると、感覚的にまぶしいと感じたり疲れたりしますから、単に光量を減らすという意味では、目を楽にすることがあるでしょう。それは噓ではありません。
しかし、それはブルーライトカットではなくても、グリーンライトカットでもグレーライトカットでも同じです。それこそ、薄い色のサングラスでも構わないのです。サングラスは幅広い波長の光を減らしてくれます。あるいは、パソコンのモニターのほうを調節して、光量を減らしてもいいですね。
夜寝る前に青い光を浴びすぎると、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑制されて眠れなくなることがあります。ですから、寝る前にブルーライトカットメガネを使うのは一定の意味があります。なお、最近のスマホにはナイトモードといって、ブルーライトを減らす機能があります。
メガネを作るとき、「ブルーライトカットのレンズにしますか?」と聞かれることがあると思いますが、ちょっと見栄えをよくするためにレンズに軽い色を入れるくらいのものだと考えておいたほうがいいでしょう。
「緑色は目にいい」と言われて緑色の洋服を買うようなものです。緑色の洋服を着たから目が良くなるわけではありませんが、信じることは自由です。
それでも日本では、現代人の目の疲れやすさと、液晶画面から放射される何となく危険な感じがするブルーライトという二つが組み合わさったストーリーが、人々の心をつかんだのでしょう。その意味では見事な、天才的なマーケティングの成果だと思います。
消費が喚起され、経済が回ったという意味では、良かったともいえます。ただ、子どもに関しては別です。過去には、発達期の小学生にもよかれと思って日常的にブルーライトカットメガネをかけさせようとした動きがあったようで、これに対して眼科医から「とんでもない」と意見書が出たことがあります。
というのも、特に子どもにとっては、あらゆる波長の光を含んだ太陽からの自然光を一定時間浴びることが大事だろうという仮説があるためです。
窪田 良
医師・医学博士