ひとりになった母親へ…息子からのプレゼント

Aさん(86歳)は、昨年夫を亡くし、現在とある地方に1人で暮らしています。現役時代、夫は上場企業で会社役員をしていたことから、Aさんは立派な自宅と多額の遺産を相続。夫を失った悲しみはあったものの、金銭的にはなんの不自由もない生活を送っていました。

そんなAさんのひとり息子である長男のBさん(51歳)は、都内で小さな会社を経営しています。高齢ながら地方でひとり暮らす母親のことを心配していたBさんは、自宅近くに自立型の高級老人ホームがオープンすると知り、母親に入居してほしいと考えるようになったそうです。

Bさんは早速資料を取り寄せ、現地に下見へ行きました。すると、高級老人ホームというだけあって設備が充実しており、外装も内装も非常にきれいです。働いているスタッフのホスピタリティも高く、文句のつけどころがありません。

決して安くはないものの、入居費も父の遺産などで問題なく支払えそうだと判断したBさんは、次の休日に実家へ帰省し、Aさんに打診してみました。

「俺の家の近くにさ、すごくきれいな老人ホームができたんだ。母さん1人ここにいるのも心配だし、もしよかったら施設に入らないか? そこに入れば、俺たちにもすぐに会えるし」。

思い出の家から離れることに抵抗があり、当初は渋っていたAさんでしたが、孫や息子夫婦といつでも会えるようになることと、息子の粘り強い交渉により、最終的に老人ホームへの入居を承諾。

入居にかかる初期費用の3,000万円は、自宅を売却したお金で賄いました。入居後にかかる月々の利用料は、約5,000万円の貯蓄と年金で問題なく支払える算段です。

きれいな設備と高いホスピタリティに、大満足の親子だったが…

慣れない生活に緊張していたAさんでしたが、いざ老人ホームでの生活が始まると、Bさんからの情報どおりスタッフは非常に優しく、いつも気遣ってくれます。

ほかの入居者も上品で話が面白い人が多く、Aさんはすぐに緊張がほぐれていきました。また、なにより、息子夫婦が孫を連れてたびたび顔を出しに来てくれるのが、Aさんにとってはなによりも嬉しかったようです。

「お父さんとの思い出が詰まった家を離れるのは寂しかったけれど、思い切ってここへきてよかったわ」高級老人ホームでの暮らしを楽しそうに語るAさん。そんな母親をみて、息子のBさんも大満足です。しかし……。