5人に1人が該当すると言われている、繊細すぎたり敏感すぎたりする傾向を持つ「HSP(Highly Sensitive Person)」。心理学上の概念で疾患ではないため「治療」の対象にはなりませんが、そのような気質を持った人が少しでもストレスや悩みを軽減させるための工夫や解決策とは? 本記事では、精神科医の西脇俊二氏の著書『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方 』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、事例別に解決策を紹介します。第1回目の今回は、「疲れて頑張れない時の処方箋」をテーマにお届けします。

他人や周りに気を遣いすぎて疲れるHSP、やるべきことができないときに試してほしい「タスクを小分けにする」スモールステップ【精神科医が解説】
「スモールステップ」を使えば一気にラクになる
「やるべきことができない」とき、HSPの人の心の中では、そのタスクが実際より大きく見える、という錯覚が起こっています。本人も「本当は錯覚だ」と、薄々わかってはいるのです。わかっているからこそ、「大した用事じゃないのに……」という自責が上乗せされてしまうのです。
そんなとき、「本当は大仕事じゃないんだから、頑張れ」と自分を奮い立たせても、あまり意味はありません。考えるだけでため息が出るような事柄については、大きく見えるものを、小さく、細かく分けるのが近道です。大きく「見える」だけでなく、本当に大きい仕事でも同じです。これが、頑張らずに実行する方法、「スモールステップ」です。
高い場所まで「5歩で上れ」と言われたら、一つひとつの段差が高すぎて、イヤですよね。しかし、50段に分ければラクですし、100段なら、もっと簡単です。低い1段を楽々上ると勢いがついて、2段目はもっと上りやすくなります。
ちょうど、「大仕事」に見えるテーマ、「他者の自己肯定感を満たす」で考えてみましょう。スモールステップに分けると、1段目はすぐに上れます。たとえば1段目として「気心の知れた友達を褒める」。この人は○○タイプかな、と仮定して、喜んでくれそうなことを言ってみるのです。これなら、気軽にできますね。
2段目は、「普段との反応の違いを見る」。喜んでくれたら成功ですし、いつもとさほど変わらなくても、「別の方法を試す」という3段目を上ることができます。この調子で、10段目くらいまでは、仲の良い人や気軽に話せる人を対象に進めていき、少しずつ……本当に少しずつ、「単なる知人」や「ちょっと緊張する人」にもトライしていきましょう。
イメージがわいてきましたか? ほかのタスクでも、要領は同じです。「仕事をする」をいきなり目指さず、「まずパソコンを開く」だけ。「ごはんを作る」ではなく、「まずは冷蔵庫を開ける」だけ。「起床する」ではなく、「まず布団の中で座る」だけ……。
それだけでも大仕事だと感じるなら、さらに小分けを。起きる前に座るのではなく、「寝返りを打つ」→「横向きになる」→「膝を曲げる」→「そのままゴロンとうつ伏せになる」なら、どうでしょう? 次のステップで「座る」に到達できる気がしませんか?
しんどいことほど、段差を低くしましょう。「しんどいと感じる自分」を責める時間は全部省略して、自分に合った高さのステップを設定してみてください。段を細かく、低く、イヤでも上れるサイズにしてしまえば、必ず上れます。