「スモールステップ」を使えば一気にラクになる

「やるべきことができない」とき、HSPの人の心の中では、そのタスクが実際より大きく見える、という錯覚が起こっています。本人も「本当は錯覚だ」と、薄々わかってはいるのです。わかっているからこそ、「大した用事じゃないのに……」という自責が上乗せされてしまうのです。

そんなとき、「本当は大仕事じゃないんだから、頑張れ」と自分を(ふる)い立たせても、あまり意味はありません。考えるだけでため息が出るような事柄については、大きく見えるものを、小さく、細かく分けるのが近道です。大きく「見える」だけでなく、本当に大きい仕事でも同じです。これが、頑張らずに実行する方法、「スモールステップ」です。

高い場所まで「5歩で上れ」と言われたら、一つひとつの段差が高すぎて、イヤですよね。しかし、50段に分ければラクですし、100段なら、もっと簡単です。低い1段を楽々上ると勢いがついて、2段目はもっと上りやすくなります。

ちょうど、「大仕事」に見えるテーマ、「他者の自己肯定感を満たす」で考えてみましょう。スモールステップに分けると、1段目はすぐに上れます。たとえば1段目として「気心の知れた友達を褒める」。この人は○○タイプかな、と仮定して、喜んでくれそうなことを言ってみるのです。これなら、気軽にできますね。

2段目は、「普段との反応の違いを見る」。喜んでくれたら成功ですし、いつもとさほど変わらなくても、「別の方法を試す」という3段目を上ることができます。この調子で、10段目くらいまでは、仲の良い人や気軽に話せる人を対象に進めていき、少しずつ……本当に少しずつ、「単なる知人」や「ちょっと緊張する人」にもトライしていきましょう。

イメージがわいてきましたか? ほかのタスクでも、要領は同じです。「仕事をする」をいきなり目指さず、「まずパソコンを開く」だけ。「ごはんを作る」ではなく、「まずは冷蔵庫を開ける」だけ。「起床する」ではなく、「まず布団の中で座る」だけ……。

それだけでも大仕事だと感じるなら、さらに小分けを。起きる前に座るのではなく、「寝返りを打つ」→「横向きになる」→「膝を曲げる」→「そのままゴロンとうつ伏せになる」なら、どうでしょう? 次のステップで「座る」に到達できる気がしませんか?

しんどいことほど、段差を低くしましょう。「しんどいと感じる自分」を責める時間は全部省略して、自分に合った高さのステップを設定してみてください。段を細かく、低く、イヤでも上れるサイズにしてしまえば、必ず上れます。