1年間の学費「平均143.6万円」だが…プラスでかかる「見えない学費」に要注意
令和3年度の文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm)によりますと、私立中学の場合、世帯年収が600万円未満の家庭は約1割で、世帯年収1,200万円以上の割合は約4割と最も多くを占めています。
一方、公立中学校の場合は、世帯年収が600万円未満の家庭は約3割で、世帯年収1,200万円以上の割合は約1割となっています。また、学習費用(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)については、私立中学校の年間の学習費用の平均は143万6,353円で、公立中学校の53万8,799円の約2.7倍です。
私立中学校では寄附金を求められるところもありますし、電車通学する場合には、上記の学習費用のほかに定期代がかかります。また部活動によっては、部費やユニフォーム代、道具代、合宿代などがかかりますし、部活動を学校以外の場所で行ったり、試合に行ったりする際には、別途交通費がかかります。留学制度についても、学校によって費用負担はさまざまで、個人負担がほとんどないものから、全額を個人負担するものまでかなり幅があります。さらに文化祭や体育祭などの行事の際には、クラスや部活動、有志などで追加の費用が発生する場合もあります。
女子の中にはみんなが持っているからと高価なものを欲しがるお子さんもいますし、交友関係によっては、年間に何度もお友達とテーマパークに行ったり、長期休みにお友達と旅行に行ったり、お友達の誕生日に高価なものをプレゼントしたりするということもあるようです。
このように、年間授業料や施設費など、学校案内に書かれている費用以外の「名前のない出費」というものがあります。私立中学に通う場合は、書かれている金額以上の経済的な負担はあると思っておいた方が良いと思います。
私立中学校でやっていける世帯年収の目安は「910万円以上」
さて、私もとても気になっていたことなのですが、果たして、どのくらいの世帯年収があれば私立中学校でやっていけるのでしょうか?
兄弟の人数や住居費、祖父母からの援助の有無などにもよるので、一概にいくらというのは難しいかもしれません。東京都私立中学校の授業料を年間10万円助成する支援制度が2023年度からスタートしました。その助成金の対象が世帯年収910万円未満の家庭(今後は年収制限がなくなる予定)となっていることから、助成金の対象にならない、世帯年収910万円以上というのが1つの基準としてあげられるかと思います。
私立中学の中でも、中学・高校のみの学校よりも、幼稚園や小学校がある大学附属校の方が子ども達の交際費がかさむとも言われているようです。もちろん、実際には、大学附属校に通うお子さんがみんな高価なブランド物を持っている訳ではないですが、やはり、そこは気になるところでもあります。実際に通われているお子さんの親御さんに話を聞いたり、文化祭など学校に行かれた際に、生徒さんや親御さんの私物や雰囲気をチェックしてみたりするのも良いかと思います。
中学受験を考えるなら、偏差値だけでなく経済的なことも入念にチェック
ここでは、私立中学に通う際の経済的な負担について取り上げました。場合によっては、これまで専業主婦だったお母様が働きに出るなど、夫婦の働き方について見直す必要もあるかもしれません。中学受験をするにしても、学校は私立だけでなく経済的な負担が比較的軽い国立や県立・都立中高一貫校などもあります。偏差値のみならず、そういった経済的なことも事前によく調べて、中学受験をするかしないか、するとしたら、どこを志望校とするのかを夫婦でしっかり話し合って、共有していくことが中学受験の成功のカギとなるかと思います。
真田 涼
RinDa臨床心理士ルーム 代表
臨床心理士・公認心理師、小説家
小児科にて発達健診や集団療育、保健所の心理判定員、行政の巡回相談員、幼稚園や保育園等でのストレスチェック、教育委員会委託講座などを行っている。著書に『受験精が来た!』(講談社青い鳥文庫)がある。