老後はどんな人間関係を築くといいのでしょうか? 精神科医の保坂隆氏は、による著書『精神科医が教える ずぼら老後の知恵袋』の中で「プチずぼら」を推奨しています。一体それはどんなことをすればいいのでしょうか? 具体的な方法を本書から紹介します。
60歳を過ぎたら人間関係も気楽に
知り合いの女性に、「60歳を過ぎてよかったと思うことは何ですか?」と尋ねたら、屈託のない笑顔でこう話してくれました。「そりゃあもう、わずらわしい人づきあいをしなくてよくなったことですよ。この歳になると、お愛想笑いをしてまでも人とつきあうのが面倒になってね。今は人間関係も省エネですませてます」
彼女によれば、盆暮れの贈り物や山のような年賀状に悩まされることがなくなっただけでも、定年後の大きな収穫だったとか。このように仕事をリタイアした人は、それまで縛られてきたしがらみから解放されて、「ああ身軽になった」と喜んでおられるのですが、これは主に女性の場合で、男性で役職に就かれていた人はまた別の反応を見せます。
女性が季節の贈答品選びから解放されて喜ぶ半面、男性はお中元やお歳暮が届かなくなったことで自分の存在感がなくなったように感じて、ひどく寂しい思いをすることがあります。これは男性の高すぎるプライドが原因でしょうが、はっきり言って、不要なプライドは円満なシニアライフの妨げになります。還暦には干支が一巡して生まれ直すのですから、それと同時に心もリフレッシュ。素直な自分に戻ってみましょう。
そうして世間体や損得を考えずに自分の人間関係を見直してみれば、おのずとつきあいたい人とそうでない人が見えてくるはずです。やっとつかんだ自由な老後の人生で、無理をしてまで嫌な人とつきあう必要はないでしょう。八方美人はもうやめて、苦手な人とは距離を置けばいいのです。
その代わり、本当に心を許せる人とはより深く密度の濃いおつきあいをすれば、生活の充実度も増します。60歳を過ぎて大切なのは、友だちの数ではなく質です。選りすぐった友人と正直につきあえる老後こそ、値千金といえるでしょう。