お惣菜に一工夫をプラスで食卓に彩りを

「スーパーで煮物や和え物などのお惣菜を見ると、つい買いたくなるんだけど、いかにも手抜きしているみたいで後ろめたくて。結局、材料を買って料理するのよね」「わかる、わかる。夫婦二人だけだから、たくさん作っても余るし、お惣菜を買う方が経済的なんだけど、なんとなく抵抗があるのよね」


年配の女性の間では、こんな会話が交わされることが多いようですが、これらの言葉には慎み深く勤勉な日本女性のメンタリティがよく表れています。手作りの料理は温かい家庭の基本。出来合いの惣菜を食卓に並べるのは主婦として恥ずかしい。こうした考えを持つのは、昔から受け継いだ「良妻賢母」のイメージを今も持ち続けているためかもしれませんが、還暦を迎える頃になれば、そろそろそんな建前を返上してもいいでしょう。


夫婦二人だけ、あるいは自分一人の生活で、毎日、料理にそれほど多くの時間と手間をかけるのは、少しもったいないような気がします。ただし、無類の料理好きで、一日中台所に立っていても平気という人は別です。そういう人にとって、料理は趣味の領域に入りますから、思う存分楽しんでください。


でも、毎食の料理をするのに疲れ、負担に感じるようなら、余計な責任感は忘れて、気軽にお惣菜をわが家のメニューに取り入れてしまいましょう。ただし、スーパーで買ったまま発泡スチロールのお皿を食卓に並べるのでは、いかにも「手抜き」に見えて、ちょっと侘びしい印象になってしまいます。

そこで、せめて小皿に体裁よく盛りつけるなどして、美味しそうな演出をしたいもの。ほんのちょっとの手をかけるだけで、スーパーのお惣菜もワンランク上の料理に変身します。私の知り合いの女性は、「最近は商店街のお惣菜をよく利用するの。手間がかからなくてとっても便利よ」と話していましたが、ユニークなのはそのコーディネート術です。


彼女はベランダのミニガーデンを利用して季節の草花やハーブを育て、それをお料理に添えているのです。そうすると、出来合いのお惣菜が上品な懐石料理風に大変身。とても手抜きとは思えない一品に仕上がるのですから、これは真似てみる価値がありそうですね。

草花だけでなく季節感のある器や箸置きなど、食卓を飾る演出法は、アイデア次第でたくさんあります。スーパーのお惣菜も一工夫すれば、たちまち気の利いた一品になるのですから、ここはプチずぼらのテクニックを発揮するいいチャンスです。