定年後に向けて保険の見直しを行う人は少なくありません。定年後も働き続ける人が増えているものの、現役時代と同等の収入をキープできるケースばかりではないでしょう。そのようななか、「保険料が安くなるから」といった理由だけで見直しを行うと、後々後悔することになるかもしれません。本記事ではAさんの事例とともに、定年前に保険を見直す際の注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
年金月13万円75歳・再雇用の夫、担ぎ込まれた病院のベッドで定年直前に加入の「死亡保険」を大後悔したワケ 【CFPが解説】
必要分の保障額に見直しすることによる効果
現在加入中の保険と提案された保険…内容の変化
■保障内容
終身保険1,500万円→定期保険500万円(80歳満期)
■保険料
約2万3,000円→約8,500円
■解約したことによる返戻金
約500万円
■保険の目的
子供の教育費や生活費を目的とした保障額から、死後の整理費へと目的を変えることで必要保障額を変更
終身保険を80歳満期の定期保険に切り替え
「これまでは、お子様の教育費やご家族の生活費のための保険としてご加入をされていたと思います。ご定年を控え、お子様も独り立ちされたいま、保障の目的を万が一の葬儀費用や、身の回りの整理費用に移されてはいかがでしょうか。そうすることで保険料もお安くでき、保険料の心配も減るように思います」 保険営業パーソンのBさんは真剣な表情です。
「保険料が3分の1に減るのは嬉しい。それに保障期間も80歳まで。80歳ならもうすぐお迎えがくるころだし、十分だろう」とAさんは笑いました。
保険料が安くなるとのことで大喜び。それに、必要な保障を自分で決めることができたことで一安心しました。 Aさんは終身保険から、提案のあった定期保険に見直しをすることにしました。
月日は流れ、見直しから10年ほど経った75歳のある日のことです。Aさんは体調を崩し、勤務中に倒れてしまいます。気づいたときには病院のベッドの上でした。 幸いなことに命に病状はありませんでしたが、入院をきっかけに加入中の保険が気になりはじめます。
「そういえば、いま入っている生命保険は何歳まで保障があるんだっけ?」
Aさんの誤算
「80歳満期って、あと5年じゃないか……」
定期保険の保険証券には、保険期間80歳までと記載されていました。
「そういえば、保険を見直したんだった……」保障は80歳まであれば十分だろうと思った、あのときの記憶が蘇ります。
Aさんはいまから一生涯保障のある保険に変えられないだろうかと思い、終身保険のパンフレットを取り寄せ、見直しを考えますが、その保険料に驚きます。
「保険料は3万4,000円!? いまから見直すとそんなに上がるのか! こんなことなら、65歳のときにもっと考えて見直しておけばよかった……」