定年後に向けて保険の見直しを行う人は少なくありません。定年後も働き続ける人が増えているものの、現役時代と同等の収入をキープできるケースばかりではないでしょう。そのようななか、「保険料が安くなるから」といった理由だけで見直しを行うと、後々後悔することになるかもしれません。本記事ではAさんの事例とともに、定年前に保険を見直す際の注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
年金月13万円75歳・再雇用の夫、担ぎ込まれた病院のベッドで定年直前に加入の「死亡保険」を大後悔したワケ 【CFPが解説】
定年後に向けて保険を見直し
妻と二人暮らしのAさんは現在75歳。65歳で定年を迎え、その後も同じ会社に再雇用されて働き続けています。 定年を控えた65歳より少し前のある日、Aさんは今後の家計について気になります。
「息子2人もちょうど独り立ちをするし、このタイミングで保険を見直したらどうだろうか?」
というのも、Aさんは毎月支払っている保険料が気にかかっていました。この保険に加入したのは40歳のとき。新入社員のときからずっと加入していた保険が何度目かの更新となり、保険料が大きく上がってしまうことになり仰天。さらにこのまま続けていくとさらに保険料は上がり続けるということを知ったため、現在の保険に見直したという経緯がありました。
〈現在加入中の生命保険〉
保険種類:終身保険
死亡保障:1,500万円
保険料:およそ2万3,000円、終身払い
65歳以降も働くうえ、公的年金も月に13万円程度受け取れるとはいえ、現役並みの給料とはいかない状況で、これまでと同じ保険料を支払い続けていけるか不安でした。それに、こんなに保障がなくてもいいんじゃないか?と気になっていたのです。
Aさんは保険の見直しについて、加入中の保険会社へ連絡し相談してみることにしたのでした。
保険会社からの提案
「Aさんは終身保険にご加入されていますね。この保険はどういった経緯で入られたんですか?」
そう口を開くのは、保険営業パーソンのBさん。青色のスーツに身を包んだ爽やかな男性です。
Aさん「当時加入していた保険が更新で保険料が上がるということでこの保険にしたんです。この保険は一生涯続いて、更新も満期もないのでそっちのほうがいいんじゃないかなと」
Bさん「そうだったんですね。確かに一生涯保障が続いて、しかも保険料は積立型になっていますね。保険料はこれからも同じ金額が続いていきますが、ご継続のほうは大丈夫そうですか?」
Aさん「そう、それを聞きたかったんです。定年を控えて、今後も働くとはいえ保険料を支払い続けられるのかなと思っています。子供は巣立ちましたが、もし自分になにかあったら妻には保険を残しておきたいんですが……保険料と保障をどうしたものか困っています」
Bさん「でしたら、保障額をAさんの思う必要額にメンテナンスしてみましょう。たとえば葬儀代やその他整理費で500万円くらいの保障が必要とすれば、500万円の定期保険に変えてあげることで保険料は3分の1くらいにすることができますよ。また、終身保険は積立型ですので、全額とはいきませんが解約をすることによりお金が戻ってきます」