日本よりも利率のよい海外の金融商品を取り扱った投資を行い、ハイリターンを狙う。投資のひとつの手段として活用している人も多いかもしれません。しかし、投資によって利益を得たものの、あとからトラブルに巻き込まれてしまうというケースも発生しています。本記事ではAさんの事例とともに、オフショア投資などの海外の金融商品における注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
高級ホテルで勧誘された「香港ツアー」に参加した年収1,800万円の50代サラリーマン…2年後に税務署から「お尋ね」が届いたワケ【CFPが解説】
オフショア投資とは?
オフショア投資とは、一般的に投資に対して税金のかからない海外で運用される金融商品のことを指します。香港などに代表される「タックスヘイブン」と呼ばれる租税回避地域で投資を行なった場合、利益に対して税金がかからないとされておりますが、適切な手続きを怠ると、後々面倒なことになるため、注意が必要です。
オフショア投資は、日本の投資商品とどういった違いがあるのでしょうか? 海外オフショア保険に加入したAさんの事例を通じて見ていきましょう。
加入の経緯
Aさんがオフショア投資の存在を知ったのはいまから10数年以上前のこと。Aさんの年収は当時1,800万円程度でした。定年退職も近づき、将来の準備についていろいろと模索をしていたときに友人から勧められたセミナーがきっかけでした。Aさんが友人と一緒にセミナー会場に足を運ぶと、そこは都内の某高級ホテル。高級感漂う会場に50〜60人くらいの同年代と思われる参加者が席に座り、資料を眺めていました。
当時はまだ存在が珍しかったIFAによる「資産運用セミナー」。IFAとは独立系ファイナンシャルアドバイザーのことをいい、特定の金融機関に所属せずに金融商品を仲介することができます。
セミナー開始早々、講師は「海外の運用会社の金融商品も取り扱うことができます」「みなさんの知らない世界がまだまだあります」と話しはじめます。資産運用セミナーの内容は、いかに日本の保険で資産形成をすることが運用効率が悪いか、逆に海外の商品は日本に比べるといかに優れているかという内容のものでした。特に、香港などに代表される租税回避地での投資には利益にかかる税金がかからず、同じ金額を日本で預けているのなら、香港の保険会社に預けたほうが効果が高いと豪語します。
初めは半信半疑だったAさんも、日本の長引く低金利に辟易していたこともあり段々と興味を持ちはじめます。
1時間ほどのセミナーはあっという間に過ぎ、終了時にIFAはこう話します「セミナー終了後に『オフショアツアー』にご参加される方を募集します。現地を視察して、金融の最先端の雰囲気を肌で感じてみましょう」。
ツアーの内容は、1週間の香港の観光ツアーを兼ねて、海外の金融機関で口座開設を行ったうえでオフショア投資を始めることができるというものでした。
ツアー金額に一瞬ギョッとしたものの、ここは高級某ホテル。しかも50〜60人の参加者のうち半数以上は申込書に記入を始めています。セミナー参加者を見渡すと身なりのしっかりした人が多く、Aさんは「こんな人たちもやっているのなら、大丈夫だろう」と思い、申し込みを決めました。