厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和6年3月分概数)」によると、全国の生活保護受給世帯のうち、約55.5%が65歳以上の高齢者世帯となっています。今後さらに高齢化が進むなか、生活保護を受けるシニアの増加が予想されますが、生活保護を受けながら「老人ホーム」に入居することは可能なのでしょうか。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、66歳Aさんの事例をもとに解説します。
老人ホームに入りたい…月7.5万円の〈生活保護費〉を受け取る66歳「要介護2」男性の悲痛な嘆き【CFPの助言】
コロナ禍のあおりを受け、喫茶店を廃業…「生活保護」を決断したAさん
現在無職のAさん(66歳)は、30歳のころから喫茶店を経営していました。
店は店舗兼住宅となっており、1階に店舗があり、2階で寝泊まり。土地建物とも、知り合いのBさん(75歳)から借りているもので、毎月賃料を支払っていました。
店を開けてからしばらくのあいだ経営は順調でしたが、2020年ころからコロナ禍のあおりを受けて、売り上げが立たなくなりました。
「一時的なことだろう」と思ったAさんに廃業する選択肢はなく、赤字は自らの貯蓄から切り崩していましたが、数ヵ月経っても客足は途絶えたまま。店の仕入れや家賃の支払いにも事欠き、ついに2年前に廃業しました。
廃業後も、使っていない1階の分も家賃の支払いが続きます。また、店を開いているときは3食とも店の賄いで済ませていましたが、別途食費がかかるようになりました。
困り果てていたところ、面倒見のいいBさんが声をかけてくれました。自身が所有する築古のアパートに、保証人も不要で、破格の家賃でAさんを入居させてくれるというのです。
Aさんはありがたく、そこに住むことにしました。
自営業のAさんは、頼りの「年金」もごくわずか
Aさんは昨年65歳になり、老齢基礎年金(国民年金)を月額5万8,000円受給しています。このほか、Aさんは、「年金生活者支援給付金」も受給資格があるため、月額4,500円受給。合計額は月6万2,500円です。
しかし、厚生年金の加入経験はないほか、国民年金も喫茶店を開いてから保険料を納付しはじめたため、満額の受給はできません。
アパートに住み替えたとはいえ、店を閉めたいま、月約6万円だけではとても生活が成り立ちません。Aさんは、泣く泣く生活保護の申請を決心しました。
66歳となった現在は、生活扶助約10万円+住居扶助3万7,000円=約13万7,000円から、収入充当額(年金)6万2,500円を差し引いて、月に約7万4,500円の生活保護費を受給。生活保護費を受けながら、職を探していました。