シニア世代のなかには「孤独感」や「孤独死」に関する悩みや不安を抱えている人もいるでしょう。しかし、鎌田實氏と和田秀樹氏の共著『医者の話を鵜吞みにするな』(ワック)の中では、「孤独と孤立は違う」、「孤独死ではなく自立死と呼ぶべき」と、孤独が新たな視点で語られています。今回は同書から「老後の孤独」との付き合い方について医師2人の対談を見ていきましょう。
「看取ってくれる人がいなくたって、私は立派に死んでいく」…高齢者の孤独死=悲惨と決めつけるべきではない深い理由【医師の対談】
「孤独死」と呼ぶな、「自立死」なんだ
和田 それにしても、高齢者の孤立を防ぐにはどうしたらいいんでしょうかね。日本では、要介護状態になってから高齢者はちゃんと制度的に保護されていて、ヘルパーさんも来てくれるし、デイサービスも利用できるので、意外に「孤立」はしない。
鎌田 よく「孤独死」という言葉が使われますが、僕は「自立死」とか「独立死」と言い換えるべきだと思っているのですが……。例えば伴侶に先立たれて一人になって、誰もみとられずに死んでも、僕自身は別に「残念」とか「悲しい」とか思いません。マスコミは「孤独死」という表現をして大げさに騒ぐけど、僕が医者も呼ばず、訪問看護師も来ずに、気がつかないうちにひとりで死んでいたら、きっと「満足死だと思って死んでいくので心配するな」と、子どもたちに言っています。
和田 その通りだと思います。在宅の人が、急性心筋梗塞とか、最悪の場合は自殺で命を落とす。「孤独死」という言葉で一括りにして、悲惨な状態を想像させますが、逆にいえば、ピンピンコロリの人や要介護状態の人は、孤独死はしないんです。だから勝手に「孤独死は悲惨」なんて考えないほうがいい。場合によっては「自立死」なんですから。
鎌田 「満足死」「自立死」「独立死」……いい言葉ですね。僕の在宅期ケアの患者さんで、旦那を看取った後、一人で生活している女性がいます。僕が往診に行くと、「万が一、私が呼吸停止をしているのを隣近所の友達が見つけても救急車呼ばないでね」と冷蔵庫に張り紙がしてある。「私は納得しているから、一人でも大丈夫」というメッセージなんです。見事な「自立死」なんですよ。それをマスコミは……。
和田 孤独死にしちゃう。孤独死にして、「行政は何やってんだ」と批判の対象にするし、一方で〝哀れな存在〞にしてしまうわけですね。
鎌田 だから、みんなもっと強くなって、「一人でも大丈夫、みとってくれる人がいなくたって、私は立派に死んでいく」っていうのが人間なんじゃないかなと思います。
鎌田 實
医師
和田 秀樹
精神科医