コロナ禍で空気清浄機の常識が大きく変化
近年、空気清浄機の販売台数を押し上げることになったのは、言わずと知れた新型コロナウイルス感染症の流行です。感染ルートの1つに、飛沫がマイクロ化して空気中を一定時間漂う「エアロゾル」が指摘されたことから、空気清浄機がウイルス対策になるのでは、と注目され、販売台数が一気に増加。国内メーカーはもちろん、海外からも高額製品が続々上陸し、2020年度は国内出荷額が前年比100.7%増と2倍以上を記録しています。
つまりコロナ禍がユーザーの空気清浄機に対する期待感を高め、結果的に進化を促進させることになりました。では具体的にどのような変化があったのか、1つずつ見ていきましょう。
1.ウイルス対策の機能を搭載
コロナ禍により、空気清浄機でウイルス対策をしたいというニーズが高まったことから、0.1μm以下というウイルスレベルの微粒子も捕集できる空気清浄機が海外メーカーから続々と登場しました。これらは主に帯電させたフィルターに電気の力で捕集する電気集じん式を採用しており、HEPAフィルターより微細な粒子の集じんを可能としています。
たとえばスウェーデンの「ブルーエア」Protectシリーズは、0.03μmまでの超微粒子を、中国の「エアドッグ」は0.0146μmまでの超微粒子の捕集。さらにアメリカの「メディエアー」は0.007μm、ドイツの「ナノドロン」は0.001μmまでの超微粒子を捕集するとして話題になりました。これらの製品は、10万円超えは当たり前で、メディエアーは40万円弱、ナノドロンは88万円〜と超高価格ですが、対策として導入する人や施設が多く現れました。
一方、多くの国内メーカーはHEPAフィルターを使用しているため、捕集できる微粒子の大きさは、0.3μmまでと限界があります。しかし、パナソニックはイオン技術「ナノイー」がダイキンは「「ストリーマ技術」が新型コロナウイルスを不活化する効果を実証。またシャープは「プラズマクラスター」がコロナの感染価を減少させることを実証しています。
これらの結果をもとに、「空気清浄機がコロナに効果がある」と言うことはできませんが、空気清浄機選びの指針の一つになったといえるでしょう。
2.単機能かつフィルター交換式が再注目
空気清浄機の要ともいえるのがフィルターの性能ですが、国内メーカーの中には「フィルター交換10年不要」をうたうものも多くあります。フィルター交換不要なら、ランニングコストがかからないのでお得に感じますが、実際は定期的なお手入れが必要で、その際にフィルターに付着した汚染物質に晒されるリスクもあります。また10年後の空気清浄性能は、新品時の6割以下まで落ちてしまうことが多く、本来の機能を享受できているとは言い切れません。
その点、海外メーカー製品は、フィルターを定期的に交換するのが一般的。こまめなお手入れは必要とせず、時期がきたらさっと新しいフィルターに交換するだけで、新品同様の性能が復活します。さらに空気清浄機に加湿機能を搭載するのも国内メーカーの特徴ですが、空気清浄性能に特化したものへのニーズが高まったことを受け、国内メーカーからも単機能のフィルター交換式が登場しています。
3.他の家電と連携させ、効率的に運転
次なる進化として注目されているのが、IoT による他の家電との連携機能です。パナソニックやダイキンのように、エアコンと空気清浄機を製造しているメーカーが続々と、両者を連携させて効率的に稼働する機能を搭載してきているのです。例えばダイキンの場合、エアコンの運転開始と同時に、自動で空気清浄機のサーキュレーター運転が開始。またエアコン暖房運転と同時に、自動で空気清浄機の加湿運転を行います。
ロボット掃除機メーカー・アイロボットの「ルンバ」も、昨年9月に発売した空気清浄機「Klaara」との連携が可能です。ロボット掃除機が掃除を始めると、空気清浄機をパワフルに稼働させ、空気中を舞うホコリも一網打尽にしてくれます。
また近年は、家具のようなデザインの空気清浄機が増えています。そもそも家電全般のデザイン性は高まっていますが、2022年には家具と一体化して存在感を感じさせない「ステルス家電」という言葉が話題に。空気清浄機にも、家具のような脚付きやテーブル付きが登場するなど、よりインテリアになじむ製品も多く登場しています。