2024年6月2日に80歳の誕生日を迎えた俳優の平泉成さんが、キャリア60年にして初主演を務めた映画『明日を綴る写真館』(秋山純監督)が6月7日に公開されました。さびれた写真館を営む無口なカメラマン・鮫島(平泉成さん)と、鮫島の写真に心を奪われた若き気鋭カメラマン・太一(「Aぇ! group」の佐野晶哉さん)との交流を描いたストーリーで、人と人が関わることを丁寧に描いた作品です。1966年に映画デビューを果たしてから、名バイプレーヤーとして数々の作品に出演してきた平泉さんにお話を伺いました。前後編。
平泉成が次世代に残したいもの
――今回の作品は、次世代に受け継ぐことも描かれていましたが、平泉さんが子どもたちや次の世代に残したいものって何ですか?
平泉:残したいものか……うーん、そうだなあ。難しいけれど、人と人が交わることはなくさないでほしいかな。
――この映画の内容にも通じますね。
平泉:今はデジタルの時代と言われてますが、あまりにも頼り過ぎでは
――自分が想定していない“他者”が来るのがきっと怖いのかもしれないですね。人とぶつかることを怖がっているというか……。むやみやたらにぶつかるのも困るけれど。
平泉:そうそう、だからぶつかることを避けるために、LINEで全部済まそうとしてしまうのかもしれないですね。でもね、やっぱり人と人が関わることはできるだけ残したいというか、なくしてほしくないという気持ちはありますね。
――俳優さんという仕事はいろいろな世代の役者さんやスタッフの方々と直に関わる仕事だと思うのですが、通じる部分はありますか?
平泉:今の若い子達は、生まれたときからテレビもあるし、あらゆる情報を見聞きしているので、何をやっても上手だし、みんな考え方も大人です。僕の若い頃はもっともっと芝居も下手くそだったんです。でも、下手なりにこだわりがあって、そのことがこれまでの役者人生に結構大事なことであったように思えるんです。
平泉成(ひらいずみ・せい)
1944年6月2日生まれ、愛知県岡崎市出身。1964年大映京都第4期フレッシュフェイスに選ばれ『酔いどれ博士』(66/三隅研次監督)で映画デビュー。以降、映画・テレビドラマ・ナレーターと幅広く活動、その個性的風貌からの存在は多くの人に愛されている。主な作品として、『書を捨てよ町へ出よう』(71/寺山修司監督)、『その男、凶暴につき』(89/北野武監督)、『失楽園』(97/森田芳光監督)、『蛇イチゴ』(03/西川美和監督)、『花とアリス』(04/岩井俊二監督)、『誰も知らない』(04/是枝裕和監督)、『シン・ゴジラ』(16/庵野秀明総監督)、『天気の子』(19/新海誠監督)、『マイスモールランド』(22/川和田恵真監督)などがある。秋山純監督作品としては『20歳のソウル』(22)以来の出演。
『明日を綴る写真館』ストーリー
さびれた写真館を営む無口なカメラマン・鮫島(平泉さん)。彼の写真に心を奪われた気鋭カメラマン・太一(佐野さん)は華々しいキャリアを捨て、弟子入りを志願する。家族とのコミュニケーションすら避けてきた太一は、訪れる客と丁寧に対話を重ね、カメラマンと被写体という関係を超えてまで深く関わる鮫島の姿に驚きを隠せない。人々の抱える悩みや問題のために必死に奔走する鮫島に振り回されながらも、自分に足りないものに気付き始める太一。同時に、鮫島とその家族にも目を背けてきた“想い残し”があることを知る。変わりゆく太一が、悔いのない未来のために踏み出した一歩とは……。
佐藤浩市さん、吉瀬美智子さん、高橋克典さん、田中健さん、美保純さん、赤井英和さん、黒木瞳さん、市毛良枝さんら日本を代表する俳優陣と、嘉島陸さん、咲貴さん、田中洸希 (SUPER★DRAGON)さんら若手の気鋭キャストらが脇を固めます。
コピーライト:(C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会(C)あるた梨沙/KADOKAWA
配給:アスミック・エース