会社員の多くは、役職定年により大幅な収入源となります。とはいえ、50代で転職なんてできるのか……そう考える人も少なくないでしょう。しかし、自分では特別だと思っていない知識・スキルは時として「大きな優位点」となるのです。人材開発コンサルタント・田原祐子氏の著書『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)より、役職定年となる半年前に転職を決心した結果、異業種への転職を成功させた50代女性の事例をみていきましょう。
役職定年で「報酬半減&部下なし」と宣告された広報課長…50代で「異業種への転職」に成功した理由【人材開発コンサルタントが解説】
島津さんが転職に成功した理由を深堀
長年培った経験知…実績づくりで転職を有利に
島津さんの転職前の状況を、「今ある姿」と「ありたい姿」で確認してみます。
・今ある姿
中規模企業の広報室長。もうすぐ役職定年を迎えるため、給料が半減する。
部下も持てなくなる予定なので、これまでは自分の部下が担当していた雑用も含め仕事が増え、やりがいのある仕事ができなくなり、給料も減るという三重苦。
・ありたい姿
小さな規模の会社でもいいので、社内報や地域への発信などを任せてもらえる企業を希望。部下はいなくても、他の事務職のパートの方々に手伝ってもらいながら、やりがいのある仕事を手がけたい。
「今ある姿→ありたい姿」分析で、ご自分が譲れなかった条件が、転職によって見事解決していることがわかります。
また、島津さんが手がけた業務の実績が「わかりやすい形や記録」になっていたため、その実績が、転職する際に効果的な「PRツール」になっています。
転職すると、「所属していた企業の肩書がなくなり、自分の価値が下がる」と心配する方がいますが、あなたが手がけた業績は、まぎれもないあなたの「作品」です。
社外秘のものや、持ち出し禁止の実績を口にするのは言語道断ですが、一般にオープンになっているものがあるなら、ぜひあなたの大切な経験知の結晶として、転職先に伝えましょう。
あなたが苦労して手がけた実績は、あなたの経験知である、知識・スキルの賜物であり、宝物です。実績は、転職する際には、大きな優位点となるため、日ごろから「実績づくり」に取り組みましょう。
「あれを手がけたのは、あなたなのですね!」と言われれば、しめたもの!
肩書がなくなっても、企業名がなくなっても、大船に乗った気持ちで、新しい職場で存分に力を発揮してください。
田原 祐子
人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者