長寿化が進む日本では“長生きリスク”なる言葉が生まれるほど、将来に不安を抱く人が増えています。そこで、老後の金銭的な不安を軽減させるため、定年退職してから年金受給開始までに受け取ることのできる「特別な給付金」について、具体的な事例からみていきましょう。FP Office株式会社の新倉摩耶FPが解説します。
給与が低すぎる…61歳男性、再就職先から提示された「年収320万円」に落胆→年金受給前にもらえる〈特別な給付金〉に大興奮【FPの助言】
どちらがお得?「失業保険」or「再就職+給付金」
ここまで、「高年齢再就職給付金」と「再就職手当」の詳細を見てきましたが、佐藤さんは「失業保険をもらい続ける」or「再就職」、どちらがお得なのでしょうか。また、再就職した場合には「高年齢再就職給付金」と「再就職手当」のどちらを受給したほうがお得になるのでしょうか。
1.再就職せず失業保険をもらい続ける場合
2.再就職し、高年齢再就職給付金を受け取る場合
3.再就職し、再就職手当を受け取る場合
の3つのパターンについて、それぞれシミュレーションを行いました。
1.再就職せず失業保険をもらい続ける場合
佐藤さんの場合、新卒から60歳まで働いているため被保険者期間は20年以上、所定給付日数150日、基本手当日額7,294円(上限額)となります。よって、総支給額は109万4,100円です。(150日×7,294円)
2.再就職して「高年齢再就職給付金」を受け取る場合
失業保険の支給残日数が100日以上あれば「高年齢再就職給付金」の対象となります。佐藤さんの賃金低下率は54.69%です。よって、再就職後の賃金26.6万円×15%=3万9,900円が支給額となり、所定給付日数150日のため1年経過後の属する月までが給付対象となることから、「3万9,900円×12ヵ月=47万8,800円」が支給金額(総額)となります。
3.再就職し、再就職手当を受け取る場合
佐藤さんの場合は基本手当日額7,294円(上限額)なので、仮に支給残日数が94日の場合は給付率70%で支給額47万9,945円となります。
つまり、佐藤さんが失業保険をもらい続けた場合は支給総額が109万4,100円のみですが、再就職した場合は、再就職後の給与に加えて「高年齢再就職給付金」または「再就職手当」が受け取れるのです。
退職から再就職までの日数が早ければ早いほど支給される金額が多くなるため、失業保険をもらい続けるより再就職したほうがいいでしょう。
また、高年齢再就職給付金は支給残日数が100日以上で支給対象となりますが、佐藤さんの場合は給付残日数が94日以上であれば再就職手当の支給額が高年齢再就職給付金の支給額を上回るため、再就職手当を受給したほうがお得です。
ひととおりの説明とシミュレーションを終えると、佐藤さんは「こんな制度があるなんて知りませんでした。とりあえず、再就職はしておいたほうがよさそうですね」と、再就職に前向きな様子でした
今回みてきたように、日本には定年前後に向けた補助金・給付金制度がいくつか存在するため、あらかじめチェックしておくとよいでしょう。そのうえで、自分にはなにが該当するのか、どの制度が利用できるのかなど、迷った場合は佐藤さんのように専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。
新倉 摩耶
FP Office株式会社
ファイナンシャルプランナー