長寿化が進む日本では“長生きリスク”なる言葉が生まれるほど、将来に不安を抱く人が増えています。そこで、老後の金銭的な不安を軽減させるため、定年退職してから年金受給開始までに受け取ることのできる「特別な給付金」について、具体的な事例からみていきましょう。FP Office株式会社の新倉摩耶FPが解説します。
給与が低すぎる…61歳男性、再就職先から提示された「年収320万円」に落胆→年金受給前にもらえる〈特別な給付金〉に大興奮【FPの助言】
「高年齢再就職給付金」とは
高年齢再就職給付金とは、60歳以降の給与低下を補填する雇用保険の給付のひとつで、失業保険(基本手当)受給後、60歳以降に再就職し、再就職後に賃金が75%未満に下がった場合に支給されるものです。
■支給要件
支給を受けるためには、下記の5つの要件を満たす必要があります。
①退職後失業保険を受給しており、60歳以上65歳未満で再就職していること
②雇用保険被保険者期間が5年以上あること
③再就職後の賃金が前職(直前)の75%未満まで低下していること
④継続雇用が見込まれる安定した職業であること
⑤基本手当についての支給残日数が100日以上であること
■支給期間
支給期間については、再就職日の前日に失業保険の支給残日数がどれだけ残っているかで変わります。「再就職した日の前日からカウントして100日以上200日未満の場合」「再就職した日の前日からカウントして200日以上の場合」と条件ごとに下記のように定められています。
・再就職した日の前日からカウントして100日以上200日未満の場合
……1年を経過する日の属する月まで
・再就職した日の前日からカウントして200日以上の場合
……2年を経過する日の属する月まで
■支給金額
再就職先の給与が60歳時点の賃金と比べどのくらい低下しているかにより、支給率が変わります。また、高年齢再就職給付金には支給限度額があります。
支給限度額:37万452円
最低限度額:2,196円
支給対象月に支払いを受けた賃金の額が支給限度額(37万452円)以上である場合には、高年齢再就職給付金は支給されません。また、支給対象月に支払いを受けた賃金額と高年齢再就職給付金として算定された額の合計が支給限度額を超えるときは『37万452円-支給対象月に支払われた賃金額』が支給額となります。
なお、高年齢再就職給付金として算定された額が2,196円を超えない場合には支給されません。
ただし、「老齢厚生年金」の支給を受けている人が「高年齢雇用継続給付」を受けると、その期間の年金の一部が支給停止される場合があるため、注意が必要です。高年齢雇用継続給付を受ける場合には、老齢厚生年金はいくら減額となるのかについても確認されるといいでしょう。