不慮の事故によるケガや病気などによって障害状態になったときに支給される「障害年金」。実はこの制度、自分が申請しない限り受給することができません。本記事では、病気で足が不自由な生活を14年間続けていたものの、障害年金を受給できることを知らなかった55歳男性の話を例に、〈もしも〉のときに活用できる障害年金について南真理FPが解説します。
病気で足が不自由になった50歳愛妻家の会社員、受け取れたはずの「500万円」を貰い損ねた事実に愕然…「年金の時効」という落とし穴【FPが解説】
時効がある年金はその存在を知ることから
障害年金の受給額決定後、改めてAさん夫婦はFPの元を訪れ、こう話しました。
「今回教えていただいたおかげで、障害年金を受け取れることになりました。知らなければもらえなかったお金なので、ありがたいです。でも年金って時効があるんですね。『年金は自分で請求しなければもらえない』と年金事務所の人にも言われたけれど、金額が金額だけに正直ショックが大きくて、しばらく引きずりそうです」と、率直な気持ちを聞かせてくれました。
制度の存在を知らなかったことで、本来受け取れるはずだった500万円以上を受け取ることができなかったのですから、Aさんの複雑な気持ちもうなずけます。手術をした当時から障害年金を受け取れていたら、お金の不安がなくなり、精神的にもっと楽だったことでしょう。
「通っている病院でこの制度のことを教えてくれていたら」とも思うかもしれません。親切に病院側から教えてくれるケースもあるかもしれませんが、基本的に自分から医師に障害年金受給の意思を伝え、手続きをしなくてはならないのが現状です。
その後、FPはAさん夫妻の将来への不安を解消すべく、手にした300万円の活用方法を提案しました。相談を終えたあと、Aさんはこう言いました。
「足は不自由になったし、障害年金のことを知らずに損した分についても、モヤモヤはあります。でも、病気から回復して生きていること、働くことができていること、そして、何よりいつもそばで支えてくれる妻がいること。本当に感謝しています。これからは、国の制度にもっと関心を持って、大切な家族との暮らしを守っていきます」。妻Bさんと微笑み合う姿はとても幸せそうでした。
社会保険制度は、私たちの暮らしを守ってくれるありがたい存在ではあるものの、なかにはあまり周知されていない制度もあります。障害年金もそのひとつでしょう。
制度を知らないことには活用することもできません。まずは、国の制度を知ることが、ご自身や家族を守ることに繋がります。〈もしも〉のときには、利用できる制度をしっかりと活用できるように、公的機関や専門家に相談するといった行動に移されることを願います。