50代からリスクが高まる口腔機能低下症とは?

オーラルフレイルがさらに進行して疾患になった状態が、口腔機能低下症です。

オーラルフレイルと重なる部分が多く、以下の7つの下位症状のうち、3項目以上該当すると口腔機能低下症と診断されます。診断は7項目の検査で判断します。

・口腔衛生状態不良

・口腔乾燥

・咬合力低下

・舌口唇運動機能低下

・低舌圧

・咀嚼機能低下

・嚥下機能低下

口腔衛生状態不良

口腔衛生状態不良は、お口のなかがどれだけ汚れているかを調べるものです。舌の表面にある凸凹に口腔内の細菌が溜まってできた苔状の舌苔(ぜったい)の付着度(口腔内の清潔度)で評価します。舌の汚れは口臭の原因になるほか、汚れた状態のままでいると誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

口腔乾燥

口腔乾燥は専用の機器を使って口のなかの水分量を計測するもので、唾液の分泌量がわかります。口のなかの乾燥は食べ物を飲み込みにくくなる、虫歯や歯周病、口臭、誤嚥性肺炎のリスクが高くなるなど、さまざまな影響があります。

咬合力低下

咬合力低下は、計測機器を使って噛む力(咬合力)を調べます。機器を使わない場合は自分の歯の残存本数で判断しますが、該当基準は20本未満となります。咬合力が弱くなると固いものが食べられなくなり、先述したように栄養バランスの偏りや食欲不振による低栄養が懸念されます。

舌口唇運動機能低下

舌口唇運動機能低下は、舌と唇をうまく動かせているかを確認するものです。5秒間、「パ」「タ」「カ」を連続で早く言い続けることで唇や舌がどれだけ動かせるかをチェックします。

低舌圧

低舌圧の舌圧とは舌が上顎に接触する力のことです。専用の装置を舌と上顎で挟み、押しつぶすことで舌圧を計測。このとき、入れ歯を使用している場合は装着したまま行います。舌と唇の機能が低下すると、食べこぼしが増えたり、滑舌が悪くなったりします。また、舌は食塊(咀嚼によって、食べ物が飲み込みやすい状態に形成されたもの)を咽頭に送り込む働きもするので、舌の動きが悪くなると誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。

咀嚼機能低下

咀嚼機能低下は食べ物を細かくしたり、すりつぶしたりする能力を評価するもので、検査ではグミゼリーをどれだけ噛めるかを測定します。

嚥下機能低下

嚥下機能とは飲み込む機能のことで、検査は基本的にアンケートに回答する形で行います。咀嚼機能、嚥下機能の低下によって食べ物を飲み込む力が低下すると、食事が十分に摂れなくなり、栄養が十分に摂れなくなってしまいます。また、むせやすくなることで、誤嚥性肺炎や窒息のリスクも高まります。

50代からは保険適用となる口腔機能低下症の検査

そもそも入れ歯を使用している方は、使用していない方に比べてお口の状態が悪くなる傾向があるため、特に口腔内の清潔度や咬合力の検査では不利だと考えられます。そういう意味では、特に入れ歯の使用が増え始める50代、早い人では40代から口腔機能低下症のリスクが高まると考えていいでしょう。

口腔機能低下症の検査は50代から保険適用されるので、オーラルフレイルの段階で検査を受けることが望ましいです。ただし、検査にはさまざまな機器が必要なため、どこの歯科医院でも行っているわけではありません。事前に問い合わせをすることをおすすめします。