口のなかの状態が体の健康に大きな影響をおよぼしていることをご存じですか? 実は、体は弱っていても、口のなかだけは元気という人はほとんどいないのです。本記事では医療法人社団アスクラピア統括院長の永田浩司氏が、口腔機能低下による影響と、口腔ケアの方法について解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
介護施設にいるヨボヨボの高齢者が、そろって顕著に衰えている「体のとある部位」…いつまでも健康な人との決定的な差
滑舌が悪くなったと感じたら舌の運動を
食べ物を噛む、飲み込む機能の衰えの原因は歯だけではありません。口腔機能低下症の検査項目に舌圧があることからもわかるように舌も関係しています。
舌の運動機能が低下するのは、唇のまわりにある口輪筋が緩んだり、舌の動きが悪くなったりしたことが原因です。もし、滑舌が悪くなってきたなどの自覚症状がある場合は、舌の運動として「タカラパ、タカラパ」とくり返して言ったり、舌を上や前に動かしたりする動作を意識的に行うとよいでしょう。
歯や舌の状態が体の健康に影響すると聞いてもイメージしにくいかもしれません。しかし、「体は弱っていても、口のなかだけは元気」という方はほとんどいないというのが、長年、介護施設で多くの高齢者のお口のなかを診察してきた筆者の実感です。口の健康と体の健康はつながっているのです。
お口の虚弱といわれるオーラルフレイルの人は、そうでない人に比べて、サルコペニア(筋肉量が減少し、身体機能が低下する)のリスクが2.1倍、要介護認定のリスクが2.4倍、死亡リスクが2.1倍だといわれています。
実際、介護施設で過ごす高齢者のなかには、食事に時間がかかり、食べ終わる前に体力がなくなってしまい、低栄養になってしまっている方がいらっしゃいます。しかし、そこまでの状態になる前に気づけるタイミングはあったはずです。早い段階で食べるときの不具合、お口のなかの違和感を見逃さないことが大切です。
永田 浩司
医療法人社団アスクラピア 統括院長