AIを使った新しい技術やサービスに関するニュースが毎日のように流れる今、実は私たちの社会や生活にどう関わってくるのかピンとこない人も少なくないのでは? まさに“AIブーム”と呼べる状況ですが、中国をはじめとする国際的なテック事情に詳しいジャーナリスト・高口康太氏はその本質は「ユーザーインターフェースの大転換」にあると言います。一体、どういうことなのか中国の事例を交えて紹介します。
AIブームの本命は「UI革命」にある…AIは私たちの社会、生活にどのような変革をもたらすのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

声で動かす「人・車・家」

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この転換で世界をリードしているのが中国です。もっとも象徴的なのが自動車。どれだけ大きなディスプレイを搭載しているかを競っているのが中国車のトレンドですが、ゲームや動画視聴だけではなく、エアコンのオンオフ、電動座席の移動、車内の照明などのタッチパネルから操作できる機能が増えています。

 

そして、ディスプレイを触らなくても同じことが音声操作でできるようになっています。

 

いや、車の中だけではありません。中国スマートフォンメーカー大手のシャオミは3月28日、初の自動車を発表しました。発売1週間で予約は10万台を突破するなど爆発的な売れ行きです。その売りの一つが「人車家エコシステム」。人間が持つスマートフォン、車の音声AIアシスタント、そして自宅のスマートスピーカーがシームレスに連携します。

 

家のスマートスピーカーに「車のエアコンを入れておいて」と話しかけると、出発前に車内が冷えている。逆に車の中から「家の防犯カメラの映像を見せて」と話しかけるだけで、車内ディスプレイに映像が映し出されるといった機能が備わっています。

 

車とスマートホームという二つの分野を抑えているのはシャオミ以外ではファーウェイぐらいですが、音声入力で車をコントロールする機能は多くの自動車メーカーが積極的に取り入れています。

 

そのソフトウェア・ベンダーとして注目を集めるのがシャオアイス(小冰)社。AIチャットボット「りんな」のコア技術を開発したことで、日本でも知られています。

 

もともとはマイクロソフト・サーチテクノロジー・センター・アジアの一事業でしたが、2020年に独立します。現在はAIチャットボット・ソリューションを企業向けに販売する事業を進めていますが、広州汽車や長城汽車、北京汽車など自動車メーカーから多くの契約を獲得しています。

 

ハンドルから手を離せないという車の特性上から音声入力が車と相性が良いのは当然ですが、パソコンやスマートフォンでもチャットと音声入力が今後、存在感を高めることになりそうです。

 

中国では生成AIサービスを公開するためには、政府に登記する必要があります。2024年4月時点で117ものAIが登記されているのですが、その中にはファーウェイ、シャオミ、OPPO、Vivo、Honorといったスマートフォンメーカーの名前がずらり。

 

現在発売されているAIスマートフォンは翻訳や文字起こし、写真の加工などのAIを使った便利な機能が搭載されているということを意味しています。音声アシスタントもありますが、できることはかなり限られています。

 

今年後半から来年にかけて出てくる新製品ではタッチパネルを操作しなくとも、かなり複雑な処理をAIがやってくれるようになると予想されています。