AIを使った新しい技術やサービスに関するニュースが毎日のように流れる今、実は私たちの社会や生活にどう関わってくるのかピンとこない人も少なくないのでは? まさに“AIブーム”と呼べる状況ですが、中国をはじめとする国際的なテック事情に詳しいジャーナリスト・高口康太氏はその本質は「ユーザーインターフェースの大転換」にあると言います。一体、どういうことなのか中国の事例を交えて紹介します。
AIブームの本命は「UI革命」にある…AIは私たちの社会、生活にどのような変革をもたらすのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

AIとのおしゃべりが仕事に

(※写真はイメージです/PIXTA)
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各種サービスにも音声入力AIというインターフェイスが導入されていきます。中国のAI登記を見ると、金融サービスや旅行予約サイト、不動産仲介企業なども並んでいます。

 

不動産仲介業者の貝殻找房(ベイクジャオファン)はデジタル店員の役割を果たすチャットボットの開発に取り組んでいるとのこと。

 

「どういう条件の部屋をお探しですか?」

 

「会社から30分以内」

 

「間取りは?」

 

「部屋は2LDK以上。近くにコンビニがないと嫌だ」

 

といった、不動産仲介業者とお話しながらめぼしい物件を探していくような作業を、スマホのAIチャット相手にやるようなサービスが開発されているとのこと。

 

これはAIがお客さんの相手をしてくれるというサービスですが、もう一歩進んで仕事のためにAIと対話するものもあります。配車アプリのDiDiは「出張で**に行くのだけど、手配よろしく」というだけで、移動手段からホテルまで全部プランを作って予約までしてくれるというAIを目標に開発しています。

 

また、中国検索大手バイドゥはチャット型AIを企業向けソリューションにも組み込んでいます。工場向け製品のデモを見ましたが、

 

「今月の生産量を表示して」

(グラフ表示)

 

「目標より遅れているけど、その理由は?」

(雨が多く作業が遅れた)

 

「年間計画達成のための改善策は?」

(人員を追加する必要あり)

 

「今までの内容をまとめて、人員追加の稟議書を作成して」

 

と、チャットだけで仕事を進めていく様子がアピールされていました。他にも新製品開発にあたって、「必要な材料は?」「類似製品は?」「その売上は?」などど、これまたチャットで仕事を進めていけるのだとか。

 

さすがに現時点でこのデモどおりにうまくいくことはないと思いますが、コンピューターを操作するユーザーインターフェースの転換という点ではなるほどとうなずけるものでした。

UI革命でコンピューターがもっと簡単に

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ChatGPTのような、さまざまな問題に対応できる汎用型の大規模なAIは開発に必要な資金も技術力もきわめて膨大で、簡単にできるものではありません。

 

一方で、限られた分野での限定的な仕事をこなすAIの開発難度はそう高いものではありません。中国でも大企業や有力スタートアップによる汎用型のAI開発が続く一方で、より小規模なAIが数の上では中心となりつつあります。