契約時よりも、円安が進んでいれば為替の差益を受け取れる可能性が高い「米ドル建て一時払保険」。昨今の円安により、当初の予定より早く目標値に到達し、新しい商品に乗り換えを勧められているというケースが増えているようです。しかし、今後の為替の動きは誰にもわからず、乗り換えには当然リスクも伴います。本記事ではAさんの事例とともに、ドル建て金融商品のリスクについて、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
年金220万円の67歳男性、歴史的円安で「ドル建て一時払保険」がたった5年で目標到達!大喜びも…保険外交員からの“甘い囁き”で大後悔のワケ【CFPの助言】
とはいえ、せっかくの高金利をうまく活用したい!
大切な資産を守るためにも、以下のことを押さえておきましょう。
すぐに決めない
よい条件であったとしても、まずは商品性を理解したうえで決断をすることが大切です。
• 将来、ドルベースでどのくらい増やすことができるか
• 契約時点での為替水準(1ドル◯円)はどのくらいか
• 中途解約の際のコストはどのくらいか
• 円高がどのくらい進行しても元本を割り込まないか
• 為替について理解をしているか
上記については最低限押さえておきましょう。ドル建て商品はリスク性のある商品であり、元本は保証されていません。必要であれば親族の方にも内容を知ってもらうことが求められます。
さまざまなケースを想定しておく
今回の乗換で不安になってしまったAさんですが、とはいえ今回の乗り換えが「間違っていた」とは現時点ではいえません。
為替の動きは誰にも読めないですし、高金利の商品に変えたことで増やせる可能性は上がったとも見ることができるからです。
Aさんの場合、直近で見ると一番の円安(1ドル160円)のタイミングで乗り換えてしまったかもしれません。ただ、保険の満期が到来する際に、たとえば1ドル120円であれば積立利率の高さもあり元本を割れることはありません。
想像を超えた円高となった場合は、解約をせずに円安に振れるのを待ち、評価額が回復したところで円に変えるという選択肢も持つことができます。自分が将来の変動をどこまで予想し、受け入れることができるかを考えておくことも重要です。
資産は分散させる
前述のように、不測の事態に解約のタイミングをずらすことは効果的です。しかし外貨建て保険一本で将来の資産形成を考えていたら、解約を先送りにすることができない可能性も考えられます。
本当に必要なときに、引き出すことができない……とならないように、資産を分散させておくことは重要です。アメリカの高金利も相俟って、ドル建て一時払保険の販売件数は大幅に増加しています。その一方で、
「預金のようなものと聞いていたのに、話と違った」
「損するだなんて聞いていない」
といった苦情が増えているのも事実です。
ドル建て一時払保険はリスク性のある商品であることをしっかり認識することが大切です。うまく付き合っていくことができれば将来の資産形成に高い効果が期待できるでしょう。
伊藤貴徳
伊藤FPオフィス
代表