年齢とともにケガや病気のリスクは高まります。医療費が大きくなると老後の生活に響きそうで心配になりますが、そんなときに安心させてくれるのが「保険」の存在でしょう。しかしなかには、60代で加入すべきではないものも存在します。本記事では、具体的な理由とともに「60代が加入すべきでない保険」について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
ずっと未加入だったが…老後を見据え、保険について検討
都内近郊で、夫と二人暮らしのAさん。現在はメーカー企業でパートとして働いています。夫は数年前、無事に定年退職を迎え、退職金で住宅ローンを完済。2人の子供も結婚し、独立を果たしました。子供の独立、住宅ローンの完済と、夫と二人三脚で頑張ってきたAさん。その甲斐もあってか、大きな不自由のないセカンドライフが過ごせそうです。
ただ、Aさんにはひとつ心配事があります。
「これまで無事にやってこられたからいいものの、この先なにかあったときのために保険に入っておいたほうがいいのかしら」
Aさんはこれまで保険に加入せずにいたのでした。幸い、大きな病気やケガもなくいままで暮らしてこられたのは素晴らしいことですが、年齢とともに病気やケガ、万が一のリスクは高くなっていきます。
保険に加入することで、保障を得て安心するのはよいことです。しかし、保険のなかには60代で加入するべきでないものもあります。Aさんのケースを踏まえて「60代で加入してはいけない保険」について見ていきましょう。
Aさんの保険に関する希望について
・この先、病気やがんになったら治療費が心配
・老後への蓄えについて備えることも検討したい
・子供はすでに独立しているので大きな死亡保障は必要ないが、葬儀代は保険で準備しておきたい
・なるべく保障内容や、保険料がずっと変わらないようなわかりやすい保険がいい
60代が入ってはいけない民間の保険
個人年金保険
個人年金保険は、60代の方が加入するべき保険ではありません。
「老後の備えのために、個人年金に加入するのはよいことなのでは?」とお考えの方もいるかもしれません。
確かに、年齢の若いうちから加入することには意味があります。たとえば20代で加入して、60代から年金を受け取るという契約内容は一般的です。
個人年金保険などの積立型の保険は、加入から受け取りまである程度の期間を必要とするため、60代で加入すると年金受取開始の年齢が高齢となってしまうことがあるのです。
保険会社にもよりますが、たとえば64歳のAさんが個人年金保険に加入すると、年金の受取開始は80歳からとなってしまうケースが多くみられます。
80歳から年金を受け取るという考えのもと加入するのであれば問題ありませんが、もっと早く受け取りたいといった場合は、希望を満たすことができなくなります。