定年退職の目前、妻から告げられた「まさかの言葉」

現在67歳の山根和也さんは、大学卒業後、某大手企業で常務取締役として勤めていました。趣味は銭湯に行くことで、日々の疲れを銭湯で癒し、次の日の仕事もリフレッシュしてこなしていました。そんな山根さんですが、65歳になるタイミングで定年退職を迎えます。

山根さんの資産状況は、夫婦で月33万円の年金収入、退職金2,000万円と、これまで貯めてきた資金が2,000万円あるため、このままいけば、引退後も余裕のある生活が送れそうです。住宅ローンも完済しており、いずれは今住んでいる家を処分し、夫婦で老人ホームに入居して、のんびり余生を過ごしたい、と考えていました。

しかし、定年退職を間近に控えたある日、妻の明美さんから「第二の人生を1人で歩みたい」と、突然の離婚宣告を受けてしまいます。山根さんには亭主関白な一面があり、家庭を顧みず、過去には浮気歴もあり、明美さんの積年の我慢は限界に達していたようです。

寝耳に水状態の山根さんは戸惑いつつも、妻の勢いに押される形で、自宅の権利と、貯蓄4,000万円のうちの2,000万円を明美さんに渡すことに。明美さんは、夫婦での話し合いの場を極力設けたくないとのことで、自宅や財産など、最低限の協議に留め、数ヵ月で協議は終了しました。実にあっけないものです。

離婚後、年金事務所から一通の封筒が

やむなく山根さんは妻との離婚が成立し、自宅と資産の2分の1を失いましたが、自身の年金がもともと26万円程度あったため、経済面での悲観はしていませんでした。山根さんは離婚成立後、すぐに家賃12万円の駅近のタワーマンションに引っ越しました。

自分より年金額の少ない妻のことだし、どうせ数ヵ月で「復縁したい」と泣きついてくるだろう、と甘く考えていた山根さん。一度住んでみたかったタワマン暮らしで、束の間ながら悠々自適な独身生活を謳歌してやろう、と目論んだようです。

しかし、しばらく経ったある日、年金機構から一通の書類が山根さんのもとに届きます。書類には「標準報酬改定通知書」と書かれており、年金分割によって変更となった年金記録が記載されています。離婚後、明美さんは、「3号分割」を年金事務所に請求していたのです。

その後、山根さんは実際の年金支給額をみて、愕然とします。山根さんの年金支給額は、26万円から約18万円に、手取りにすると15万円程度まで減額されていたのです。

山根さんは、明美さんとの離婚協議中に年金分割について話し合っておらず、自身の年金は、引き続きそのまま受給できる、と思い込んでいました。