日本人の9割がなんらかの民間保険に加入している一方で、自分が加入している保険の仕組みについて「しっかり理解している」と答えられる人は決して多くありません。そこで、「個人年金保険」の仕組みやリスクについて、「米ドル建ての変額個人年金保険」を契約したAさんの事例を交えてみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
あぁ、どうしよう…銀行員に“言われるがまま”退職金1,500万円で〈外貨建て保険〉を契約した69歳男性。「歴史的な円安」で生まれた“まさかの悩み”【CFPの助言】
老後の保険とライフプランを考える
Aさんの話から筆者は、Aさん夫婦の70歳以降のライフプランをシミュレーションすることにしました。
Aさんの現在の収入は、給与と年金で月額約48万円です。70歳以降は年金だけとなり、夫婦で月額約27万円※と半額まで減ります。しかし、現在の毎月の支出額は、税金や社会保険料を含めて約28万円※ほど。退職後は給与所得分の課税額や社会保険料も減ることから、支出はさらに減るでしょう。また、自宅の大規模リフォーム等でまとまった支出もあり、貯蓄額は現在約500万円だそうです。
※ 世帯主平均72.1歳の実収入は26万7,508円。税金や社会保険料を含む支出30万3,054円(総務省家計調査報告「二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の家計収支(2023年)」より)。
Aさんは、これまでに外貨預金や国内外の株式、投資信託に投資経験はなく、また今後も投資するつもりはないそうです。なにより「いまさら保険の仕組みを覚えて運用するのは面倒です」とのこと。
そこで、今後も現在と同水準の収支であれば100歳以上も貯蓄はほとんど使うことなく残ること、また「米ドル建ての変額個人年金保険」をいま解約しても2,000万円以上の返戻金が手元に入るため、ここは収益を確定して貯蓄額を増やしておいたほうが心身ともに安心した生活が過ごせるのではないかと、保険の解約をすすめたところ、Aさんは納得して、保険解約の手続きをはじめました。
保険は納得して加入する資産
ここのところの円金利の上昇傾向に伴い、外貨建ての保険商品は円建ての商品へのシフトや、また銀行窓販を停止した粗悪な外貨建て保険商品もあるとの報道がありました。
自分が契約している保険商品の運用状況を、自身の資産を守るために気にかけるのは当然なのに、ましてや保険商品の内容を知ることもなく契約することは、冷静に考えればあり得ないことに気づいたAさんは、「たまたま運が良かっただけですね。あぶなかった」と苦笑いしながら事務所を後にしました。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員