「米ドル建て変額個人年金保険」に加入したAさんの事例

間もなく69歳の誕生日を迎えるAさんは、子どもたちも独立して妻(64歳)とふたりで生活していました。

Aさんは、大学卒業後に就職した会社を60歳で定年退職し、その後はその関連会社に再就職して、あと1年半後70歳で再度定年を迎えるところです。

Aさんは、60歳で定年を迎えた時に受取った退職金の一部で住宅ローンを完済し、残りの約3,000万円は70歳以降の生活費として銀行口座に残しておく予定でした。

しかし、Aさんが退職金を預けていた銀行の営業マンは、このまま預けておくだけではもったいないとしきりに預金の運用を持ちかけてきます。約1年後、ついに根負けしたAさんは、当時その銀行で販売していたある保険会社の「米ドル建て変額個人年金保険(運用期間10年)」に加入しました。

Aさんはこの保険に、金融資産の半分である1,500万円を支払いました(2016年当時の為替レート(約110円)に換算して約13万6,363ドル)。

この13万6,363ドルから、保険商品の運用に関わる、死亡保障や特別勘定の運用などの費用を差し引いた額で10年間運用します。Aさんは銀行員に言われるがまま契約の手続きをしてからそのまま放置していたそうです。

この円安でAさんが抱いた悩み

再定年後の生活を考えはじめたAさんは、ここのところの円安で、あの保険を解約したらいくらになるかと思い銀行に問い合わせてみました。

すると保険の満期は約1年半後で、現時点で解約すると解約返戻金の1.4%、1,909ドル(1ドル150円換算で約28万6,362円)が解約控除され、その分を差し引いても14万6,726ドル(約2,209万円)も戻ってくるとのことでした。

また、1年半後の満期まで運用すれば、解約控除は不要ですが、その間に株価や債券相場の下落や為替相場の変動、投資先国の政治や経済などが混乱(カントリーリスク)などにより、現時点の受取額を下回ることもあると聞き、気にかかりました。

Aさんは、契約した時より対米ドルに対して、円安になった恩恵が受けられることは理解できました。しかし、そもそも商品内容をよく理解していないため、「契約を続けるべきか解約すべきか」さえ判断がつきません。

「判断を誤って本来もらえるはずの利益を受け取れないのは嫌だな……あぁ、どうしよう」Aさんはこの歴史的な円安によって“まさかの悩み”を抱えてしまいました。

そこで、Aさんは長男が住宅を購入するときに相談したと話していた、筆者の事務所を訪れたのでした。