60代の会社員は、退職するタイミングによってもらえるお金に差があることをご存じでしょうか。役職定年後、関連会社で働くAさん64歳の事例をもとに、「失業保険」と「高年齢求職者給付金」の特徴と違いについて、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
親父、もう辞めれば?…年収380万円の64歳“窓際サラリーマン”、33歳長男のひと言に激怒→感謝して「定年直前」に退職した理由【CFPの助言】
あと少しの辛抱だ…出向後、“窓際サラリーマン”となったAさん
Aさんは、2歳年下の妻と都内の分譲マンションに暮らす64歳の男性です。夫婦には2人の子どもがいますが、それぞれすでに独立しています。
Aさんは大学卒業後、食品製造販売会社B社に就職しました。役職定年まで勤め上げ、60歳で退職金をもらったあとは、関連会社であるC社に出向※。現在は営業部付部長として働いており、定年である65歳の誕生日まであと半年というところです。
※ 総務省「労働力調査」(令和4年)によると、男性の就業者の割合は、60~64歳で83.9%、65~69歳で61.0%。女性は60~64歳で62.7%、65~69歳で41.3%となっている。
Aさんの年収は、B社にいたころは800万円でしたが、出向後は半分以下の380万円に。C社の退職金は給与1ヵ月分だそうです。
Aさんは、どんな仕事もそつなくこなすことができる“できる人”です。しかしその一方で、話し方や所作には独特のクセがあり、B社では若手や中堅社員に勘違いされることもしばしばありました。
人柄がわかれば決して悪い人ではないことから、そんなときはAさんをよく知るベテラン社員がとりなしてくれていましたが、出向先のC社にそのような仲裁役はいません。Aさんは徐々に職場で煙たがられ、いわゆる“窓際サラリーマン”となってしまいました。
Aさんは不服で、C社の雰囲気に嫌気が差しています。いますぐ辞めたいところですが、Aさんには30歳のときに購入したマンションのローンが残っています。残債は約100万円、完済までは約1年です。
「ローンも残っているし、定年まではあと数ヵ月……もう少しの辛抱だ」と、指折り数えながら毎日を送っていました。