長生きはうれしくもあり怖くもある…というのが、多くの人の認識ではないでしょうか。怖いと感じる理由の1つが「認知症」であることも間違いないでしょう。老年精神科医である和田秀樹氏は、実際に多くの高齢者から認知症予防について質問されるそうです。今回は、そんな和田秀樹氏による著書『和田秀樹の老い方上手』(ワック)から一部抜粋して、認知症のリスクや不安とどう向き合うべきか解説します。
備えあれば憂いなし…介護保険やサービスについて勉強しておく
介護保険って、実は40歳を過ぎたら給料から天引きされます。65歳を過ぎると、今度は、年金から介護保険料を引かれてしまう。にもかかわらず、自分がボケたり寝たきりになって要介護の状態になるまでに、介護保険の申請方法とか、どんなサービスを受けられるのかといったことを事前に勉強している人はほとんどいません。なってからあわてるケースが多いのです。
さっき言ったように、認知症になってからも頭を使えば使うほど、以後の進行が遅くなります。だからデイサービスのようなところに行って、頭を使う遊びとかをすることで進行を遅らせられるわけです。
だけど、事前に準備していない人たちほど、あんなところへ行くのはいやだって言い出すから、そうなる前に、自分が認知症になったらデイサービスでどんなことをするのか知っておくとか、身の回りのことができなくなったらどこの老人ホームに入るかということも前もって決めておいたほうがいいと思います。
いまは体験入居というシステムがあるから、ちょっと入居してみて、たとえば食べ物が口に合うかどうか試してみるといいでしょう。いまは老人ホームのほとんどが、健康にいいからってやたらに薄味のものを食べさせようとします。
まあ大概まずいですから、多少体に悪くたってうまいものが食べたいという人は美味しいものを出すところを探すとか、介護職員のサービスをチェックしておくとかね。
スタッフには当然、いい人も悪い人もいるわけだから、それによって老後の暮らしはずいぶん違ってくる。だから認知症になってしまったあとのサービスはけっこう用意されているので、なってしまってからどういうサービスを受けようとか、どういう老人ホームに入ろうかと考えるよりも、備えあれば憂いなしで、事前に検討しておくことが望ましい。
誰もが認知症になるのを不安がっていますが、その不安がいくらか軽くなるだけでもメンタルヘルス的にはいいと思います。運悪く進行の速い認知症になってしまってパニックになるんじゃなくて、そうなってしまった時のための対策はいっぱいありますから、ちゃんと勉強をしておくべきでしょう。
和田 秀樹
精神科医