長生きはうれしくもあり怖くもある…というのが、多くの人の認識ではないでしょうか。怖いと感じる理由の1つが「認知症」であることも間違いないでしょう。老年精神科医である和田秀樹氏は、実際に多くの高齢者から認知症予防について質問されるそうです。今回は、そんな和田秀樹氏による著書『和田秀樹の老い方上手』(ワック)から一部抜粋して、認知症のリスクや不安とどう向き合うべきか解説します。
頭を使い続けること、いま出来ていることを続けることが大切
具体的に言えば、軽いもの忘れが始まったとしても頭を使い続けるとか、意欲を衰えさせることなく、いま出来ていることをなるべく続けるということです。
認知症になったら一律に運転免許を取り上げることが現在の法律では決まっているわけですが、それは認知症の高齢者にとって逆効果です。ブレーキとアクセルを踏み間違えたり、逆走したりして高齢者が起こした事故が問題になっていますが、そのほとんどは認知症によるものではありません。むしろ逆です。
だって、認知症になったら免許を取り上げられるわけですから、大事故のほとんどは認知機能検査にパスした高齢者が起こしていることになります。
つまりペーパーテストの成績と運転技能にさほど相関性があるわけではない。にもかかわらず、そういう思い込みが非常に激しくなっていて、そのために免許を返納してしまうと、活動範囲が狭まって、外出する機会も減ってしまう。明らかに認知症になりやすくなるわけです。
そういう意味で、いま出来ていることをなるべく続けるべきだし、頭を使うという意味では仕事を続けたほうがいい。あるいは趣味のサークルもなるべく続けること。そういうことが認知症を遅らせるためにはとても大事です。
それでも厄介なのは、人によってやはり運・不運があって、たとえば、進行がすごく速い若年性認知症といわれる病気にかかってしまうと、1、2年のうちにどんどん悪くなって、人と話が通じなくなったりしてしまう。
また、頭を使っていても、なる人はなってしまいます。レーガン米大統領とかサッチャー英首相のように、どんなに頭を使う仕事をしていても、どんなに頭がいい人でも関係ない。
ただおそらくレーガンさんやサッチャーさんは、大統領や首相になっていなかったらもっと早く認知症になっていたと思いますよ。認知症っていうのは、頭を使い続ければ続けるほど進むのを遅らせられるけれど、使い続けていてもなる人はなるということです。だとすると、ある一定以上、認知症がひどくなった場合の準備をしておくことも必要になる。
たとえば老人ホームを探すとか、介護保険について検討しておくといったことです。