住まいを探す際、「駅近物件」を中心に探す人は少なくないでしょうが、それは大都市に住んでいる人に限られた話なのかもしれません。麗澤大学工学部で教授を務める宗健氏の著書『持ち家が正解!』(日経BP)より、一部抜粋・編集して地方と都市部の生活様式の二極化について解説します。
「シャッター商店街を再生」「コンパクトシティー」は東京の価値観の押し付け!? 実は「イオンのある街は住みやすい」という、東京人が認めたがらない〈真実〉【専門家が解説】
イオンのある街は「住みやすい」
不動産の“駅近物件”が人気なのは限られた大都市部にすぎず、
そうした地方の生活利便性を高めているのが、イオンに代表される大型ショッピングセンターで、その有無は、居住満足度に明らかに影響を及ぼしている。一方、都市中心部の利便性は公共交通網の発達で向上し続けてきた。本当に住みここちのいい街を探すには、地方と都市部の生活様式の二極化についてしっかり考える必要がある。
地方や郊外では、日常の交通手段はクルマで、休日には郊外のショッピングセンターに行く、という生活様式が定着している。「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」の個票データを使って、大型ショッピングセンターのある街とない街の違いを分析した散布図が上の図である。
散布図の横軸は居住満足度で、縦軸は生活利便性因子の得点になっている。ここでは全国のすべてのイオンモールが含まれる延べ床面積2万4
散布図を見れば、横軸の居住満足度が同じ場合、大型ショッピングセンターがある街のほうが、ない街よりも明らかに縦軸の生活利便性の因子得点が高くなっている。大型ショッピングセンターには、全国に展開しているイオンモールのほかにも、中・四国、九州のゆめタウン、中・四国のフジグラン、関東のアリオ、東海のアピタのほか、三井アウトレットパーク、ららぽーとなど様々なものがある。そうした大型ショッピングセン
にもかかわらず、イオンモールのような大型ショッピングセンターは、一部の街づくり「専門家」には評判が良くないようだ。そうした批判は一部の専門家だけではなく一般人の間にも根強いようで、例えばTwitter(現X)で「イオン 商店街 衰退」と検索してみると「イオンはけしからん」という趣旨の書き込みが容易に見つかる。
この意識のギャップはどこからきているのだろうか。
実際のデータを調べてみると、戦後の日本は貧しく、モータリゼーションによって自動車が広く普及したのは1964年の東京オリンピックの後だということが分かる。クルマの普及率が高まる前の1970年ごろまでは、地方の小さな街でも駅前に商店街があり、バス路線も充実していて周辺から買い物客が集まっていた。
1966年には全国で228万台しかなかった乗用車が、わずか6年後の1972年に1091万台となり、さらに7年後の1979年には2140万台と急激に普及したことで、駐車場のない地方の駅前商店街は一気に衰退していった。