自動車の普及と地下鉄の整備は同時並行で進んだ

一方で、東京や大阪のような戦前からの大都市では、もともとあった国鉄(現JR)や私鉄に加えて地下鉄が建設され、駅前の活況が維持されてきた。意外なことに、1960年時点の東京に存在した地下鉄は、銀座線(浅草〜渋谷)、丸ノ内線(池袋〜新宿)だけであり、1960年代に日比谷線、都営浅草線、東西線、千代田線、都営三田線が整備され、1970年代に有楽町線、半蔵門線、都営新宿線、1990年代に南北線と都営大江戸線が開業している。そして、現在でも首都圏では新線の工事が続けられている。

また、地方都市中心部での地下鉄開業も、名古屋市営地下鉄東山線が1957年に開業しているのを除けば、札幌市営地下鉄が1971年、横浜市営地下鉄が1972年、神戸市営地下鉄が1977年、京都市営地下鉄と福岡市営地下鉄が1981年、仙台市営地下鉄が1987年などとなっている。自動車の普及と同時並行で、地方都市の地下鉄整備が進められたわけだ。

地方や都市の郊外部での急激な自動車の普及と、都市中心部での地下鉄整備、という全く異なる二つのベクトルの政策が同時に実行されたことで、都市中心部に歩いて暮らす生活様式が残った一方で、地方や都市の郊外部ではクルマ中心の生活様式に大きく変化していった。

商店街に衰退をもたらした元凶とされることもある大型ショッピングセンターだが、地方では半径10キロ以上の商圏を持つ大型ショッピングセンターが、昔の商店街のような機能を果たしている。

しかし、クルマに乗って大型ショッピングセンターに行く生活様式は、ここ20〜30年で形成されたものだ。一般社団法人日本ショッピングセンター協会が公表しているショッピングセンターの一覧を集計してみると、店舗面積1万平方メートル以上のショッピングセンターのうち1990年以降に開業した施設が施設数で79.5%、面積ベースでは83%を占める。そして2000年以降に開業したものに限ると施設数で51.1%、面積ベースで59.1%を占めている。

つまり、クルマの普及とショッピングセンター開設の狭間だったのが1980年代であり、バブル経済といわれ地方から東京圏に人口が大量に移動した時期でもある。