みなさんは“お菓子のフードテック”と聞いて、どんなことを思い浮かべますか? デジタル化や機械化によって、有名パティシエの味が家庭でも再現できること? 従来では作ることができなかった栄養バランスや宝石のような美しいお菓子が誕生することでしょうか? 視点を未来に向けると、想像はどこまでも膨らみますが、実はすでに様々なテクノロジーを活用した菓子製造や販売が行われ、それらのニュースが世界中で発信され続けています。そこで今回は、日本でも食べたり体験することができる“お菓子業界のフードテック事例”を3つご紹介していきたいと思います。
いつでも、どこでも、新しいがキーワード。お菓子作りの現場で活躍する最新テクノロジーとは?

シャトレーゼに24時間営業の無人決済店舗が登場。その仕組みとは?

シャトレーゼ西麻布店。2023年3月より無人決済システムを導入、24時間営業の店舗に。(シャトレーゼ提供)
シャトレーゼ西麻布店。2023年3月より無人決済システムを導入、24時間営業の店舗に。(シャトレーゼ提供)

 

日本有数の菓子専門店として広く愛されているシャトレーゼにも、最新のテクノロジーを活用した事例を発見することができます。それは、無人決済システムを導入した24時間営業店舗の運営です。

 

2021年12月、東京・港区にオープンしたシャトレーゼ西麻布店は当初、夜間の飲食後のデザート需要などに応えるために出店したところ、周辺住民を中心に週末や日中の需要があることが判明。2023年3月に店舗をリニューアルし、24時間営業の無人決済システムが導入されました。

 

導入されたシステムは、天井に設置された複数のカメラやセンサーなどの情報から、顧客が手に取った商品をリアルタイムで認識。購入する商品を持って出口付近の決済端末のディスプレイ前に立つと、購入商品の内容と合計金額が自動的に表示される仕組みです。顧客はそれを確認し、決済すれば買い物完了となります。

 

店舗にとっては人件費削減つながると同時に、顧客にとっては買物時間の短縮につながるだけではなく、時間帯に拘束されることなく早朝や深夜にも買い物ができることが大きな魅力に。昼間のコアタイムにはスタッフが店内にいて、アップルパイなどの焼きたての焼菓子やケーキ類を通常店舗と同様に販売しています。

 

無人決済システムは、子どもからお年寄りまで使いやすい仕組みになっている。(シャトレーゼ提供)
無人決済システムは、子どもからお年寄りまで使いやすい仕組みになっている。(シャトレーゼ提供)

 

またこの仕組みはシンガポールLe Quest Mall店でも導入されています。

 

シンガポールはシャトレーゼが進出している海外諸国の中でも日本と並んで治安が良いことなどから、住居に囲まれた地域にあるモールにおいて無人店舗を出店。日本とは異なり、この店舗で買い物をするための専用アプリへの登録が必要で、アプリ上のコードをゲートでスキャンしなければ入店できない仕組みになっています。

 

またアプリにはあらかじめクレジットカードの登録も必要。このように人口密度の高い地域においては、近隣に住む顧客の都合に合わせていつでも並ばずに商品を購入できることは大きなメリットに。今後はさらに各家庭にとっての“お菓子専用冷凍冷蔵庫”という存在としても存在感を高めていく可能性があります。

 

さあ、いかがでしたでしょうか? お菓子は、多くの人々にとって癒しや幸せを与えてくれる存在。そしてデジタルやテクノロジーのさらなる進化がお菓子に新たな可能性をもたらし、私たちの人生にかけがえのない喜びを与えてくれることでしょう。ますます関心を寄せていきたい世界であることは間違いありません。

 

<著者>

スギアカツキ

食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。