勝ったらもっと勝ちたくなり、負けたら取り戻したくなる「ギャンブル」。魅力を感じなくなるか、もしくはやりたくてもできない環境に身を置かれる以外にやめる方法はないのかもしれません。本記事では公認会計士、税理士、証券アナリスト、CFP、宅地建物取引士の資格を持つ鄭英哲氏が、Sさんの事例とともに身の丈に合わない借金の恐怖について解説します。
パチンコやめられず…年収600万円の夫の給料と自宅を担保に、消費者金融で「600万円」借りた50歳・無職「ギャンブル依存」の主婦の末路【CFPが解説】

消費者金融の恐ろしさ

さっそく法務局へ行き、不動産の登記簿謄本を取ってみると、Sさんの言うとおり自宅の名義は夫。そして、不動産価値を調べてみたところ、400万円程度は担保余力もあるようでした。

 

「自宅を担保」、「担保余力」と聞いて不思議に思った方もいるでしょう。50歳前後の夫婦が住んでいる自宅となると、ほとんど場合は住宅ローンの返済真っ只中。Sさんの自宅もまさに住宅ローンの返済中。そんな住宅ローン(1番抵当)の次の2番抵当にお金を貸せるのでしょうか。

※不動産が2回担保設定された状態のこと

 

しかし消費者金融は、緩く緩く不動産価値を出して無理にも貸せるようにするのです。嘘のような本当の話です。今回のケースは、

 

不動産価値-住宅ローン=担保余力400万円

 

だったというわけです。

 

夫名義での不動産担保…その審査結果

なにはともあれ、本人の希望どおり250万円の多重債務は不動産担保ローンで1本化することはできるわけです。はたして夫は自宅を担保提供してくれるのでしょうか。不動産価値やそのほかの書類も問題なし。

 

審査結果は、「400万円の融資」。

 

あとは、夫が消費者金融の債務のために大事な自宅を担保に出してくれるかどうかだけ。契約日を決める電話をしたところ、Sさん曰く夫からの承諾を得ることはできたと。にわかに信じられませんでしたが、契約することになりました。

 

そして、契約当日に夫婦で来店。朝から晩までテレビCMを流しているX社がどんな会社かどうかは夫も知っているはず。夫から持参した自宅の権利証を預かり、淡々と契約書類に記入してもらい、契約は無事終了。もう一度言いますが、仕事をしていない専業主婦が、夫の給料を当てに消費者金融5社でお金を借り、夫名義の自宅を担保にさらにお金を借りる契約をしたということになります。

 

これだけでも違和感の塊ですが、ささいな違和感はこの直後。Sさんからの一言「今回、融資してくれたので商品券を渡したい」と。もちろん「これは業務ですし、規則で決まっていますので」と固辞。そのかわり、後日菓子折りかなにかをもらったと記憶しています。

 

そのくらい、融資金がなければ困ることがあったのでしょうか。さらに、無職の専業主婦が250万円も借りてなにに使ったのだろうか。いずれにしても、他社も含めた250万円はすべて1本化にしたことは、信用情報で確認することはできました。