地方にある実家。親の亡きあとは空き家となってしまい、処分に頭を抱えているという方も多いでしょう。「すぐに売却すると近所の目が気になる」「そもそも遺品整理ができておらず、すぐには売却できない」……そんなときにはリースバックという選択肢が有効かもしれません。本記事では、Aさんの事例とともに、地方の実家における売却手段の選択肢のひとつとなり得る「リースバック」について、不動産と相続を専門に取り扱う山村暢彦弁護士が解説します。
もう地元には戻らないが…母逝去で空き家となった実家、「ご近所の目」を気にせずスムーズに売却する方法【弁護士が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「短期的なリースバック」のメリット

さてリースバックとは、「セール・アンド・リースバック」とも呼ばれ、現在所有している不動産を先に売って、そこからリース(賃借)するという取引形態をいいます。不動産の場合ですと、高齢者の方が、自宅を売却したうえで、買主から改めて自宅を賃借する、死亡後に買主が自由に不動産を処分できるようになる、という形での利用が進められてきました。

 

もっとも、今回の事案では、長年居住を継続することは想定していません。最初の3年程度を賃借し、そのうえで遺品の整理を行い、賃貸契約を解約のうえ、買主業者に不動産の処分を任せたいとのご意向です。このような一時的な遺品整理のためのリースバックというのも、新しいリースバックの利用方法だと感じます。

 

リースバックの一番の問題点としては、賃借人が死亡したら自由に処分できるという条件の場合、いつ買主が処分可能になるのか不安定なため、買主業者としては、そのリスクを織り込み比較的安い金額で売却金額を打診せざるを得ません。

 

他方、本件のように、2年、3年など比較的短い期間で、売却可能になるのであれば、処分できるようになる期間も明確ですので、一般的な売却相場とそれほど乖離せずに売却可能なのではないかと思います。

 

今回は、先立つ費用を実家の財産から捻出したいというニーズと、遺品についても雑に処分せずにしっかりと整理してから売却したいという希望を叶えるスキームとしてご紹介しました。

 

近所の人に相続してすぐに実家を売ったと思われたくない…

地方では世間体といいますか近所の目が気になるという実情もあるかと思います。相続が発生したとたん、実家を売却したとなると、世間の風当たりが気になるというお話も実際多く聞きます。

 

そのため、今回のようにリースバックを利用すれば、2~3年期間をおいて売却することになりますので、世間体が気になるという問題にもよい解決策となるでしょう。