地方にある実家。親の亡きあとは空き家となってしまい、処分に頭を抱えているという方も多いでしょう。「すぐに売却すると近所の目が気になる」「そもそも遺品整理ができておらず、すぐには売却できない」……そんなときにはリースバックという選択肢が有効かもしれません。本記事では、Aさんの事例とともに、地方の実家における売却手段の選択肢のひとつとなり得る「リースバック」について、不動産と相続を専門に取り扱う山村暢彦弁護士が解説します。
もう地元には戻らないが…母逝去で空き家となった実家、「ご近所の目」を気にせずスムーズに売却する方法【弁護士が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

相続税対策にもなり得る

また、今回のようにリースバックを利用すれば、本来遺品整理をしてから売却になるところ、先に売却しその代金を受け取ることができますので、素早く動くことができれば、相続税が発生する前に売却して、相続税の納付金を準備するという利用用途も想定できます。本末転倒ではあるのですが、相続税の負担が大きく、相続財産を処分しないと相続税を払えないという地域もあるのが、実情です。

 

親族が利用できない実家不動産は、「売るか・貸すか」の2択

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

さて、今回は、地方の実家問題の解決策の一案として、リースバックをご紹介させていただきました。

 

リースバックを利用する側としては、建物が解体できるような更地の状態の売却査定金額よりは、リースバックのほうが売却金額は下がる可能性がある、ということは知っておいたほうがいいと思います。これは、不動産会社目線でいえば当たり前のことなのですが、同じ不動産でも、すぐに転売・売却可能かどうか、新築物件が建てられる状態なのか、他方、居住者が利用しており、事実上利用不能かどうかという点は、不動産の価値を大きく左右する要素であるためです。

 

また、地方の実家問題に関しては、筆者自身もなかなか頭が痛い問題だと痛感しております。基本的には、親族が利用できない実家不動産は、「売るか・貸すか」この2択しかないと思います。

 

貸すというのもひとつの選択肢に思えるのですが、老朽化した家屋を賃貸すると、賃借人からの修繕要求が度々生じて、収益不動産としては管理が難しい物件になってきます。

 

とはいえ、売却する、というのも「生まれ育った家」ということを考えると、心理的抵抗感も強いかと思います。固定資産税や管理費等も考えると、住む人がいない実家を維持するのは、なかなかの経済的負担になります。そのようななか、遺品整理だけにはしっかりと時間をかけたいとなると、今回のような短期的なリースバックというスキームの利用も検討のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。

 

地方の実家を出て、都市部で生活基盤ができたという家庭は非常に多いかと思いますので、今後、ますます実家の利活用というテーマは話題になってくるでしょう。

 

 

山村 暢彦

山村法律事務所

代表弁護士