JR京都駅から東本願寺・西本願寺へ至るルートは、名建築の宝庫

JR京都駅から東本願寺・西本願寺へ至るルートは、参詣者向けの旅館や仏具屋が並び、門前町特有の落ち着いた雰囲気の街路を散策できる。両寺院とも明治期の再建なので近代建築の範疇だ。ぜひ参詣してほしい。

出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真1]真宗本廟東本願寺 菊の門(勅使門) 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

01.プラットフォーム上の鉄道遺構「JR京都駅プラットフォーム上屋」

JR京都駅プラットフォーム上屋には、リベットを打った鉄骨の美しいアーチが残っている。リベットとは鉄骨を留める大きな釘のようなもの。打つ前のリベットの頭は一方だけで、熱したリベットをすばやく打ち込んで、もう一方を叩いて留める。よく見ると叩いた跡がわかる。

建築年・設計者不詳 京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真2]JR 京都駅 プラットフォーム上屋 建築年・設計者不詳 京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

02.これで京都の風景が変わった「JR京都駅ビル」

JR京都駅ビルは、高層化を目指したコンペが行われたが、結果的にもっとも背の低いものが選ばれた。原広司は世界中を歩いて集落や都市を研究した建築家で、ここの内部吹き抜けの大階段もローマのスペイン階段のような街路の楽しさを再現している。最上階の展望テラスまでエスカレーターで上がることができる。

1997年 原  広司、アトリエ・ファイ建築研究所 京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真3]JR 京都駅ビル 1997年 原 広司、アトリエ・ファイ建築研究所 京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

03.賛否両論のローソク「京都タワー」

JR京都駅北向かいの京都タワーは、あまりの高さに反対運動が起こったことで有名である。山田守は郵政出身の建築家で、大正時代には分離派として知られた。分離派といってもウイーン分離派ではなく、1920年代ヨーロッパの表現主義に近い。放物線を多用する彼のデザインの特徴は、このタワーとその下のビル部分にも表れている。建築家の棚橋諒が構造設計を担当しており、それまでのタワーとは違い鋼鉄製の筒状の構造となっているのが特徴だ。

1964年 山田  守、山田守建築事務所、京都大 学棚橋研究室 京都市下京区烏丸通七条下ル東塩小路町721 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真4]京都タワー 1964年 山田 守、山田守建築事務所、京都大学棚橋研究室 京都市下京区烏丸通七条下ル東塩小路町721
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

04.京都のインターナショナルスタイル「セコム損保京都ビル」

安井武雄は大阪モダニズムの旗手として知られる建築家で、烏丸七条南西角のセコム損保京都ビルは、船をイメージさせるインターナショナルスタイルだ。

京都駅から北へ延びる烏丸通りは、明治から大正にかけての都市改造で、駅から御所へ通じるメインストリートとして設計されて今の姿になった。大正、昭和の2度の即位式ではパレードのメインコースとして使われた。戦前の写真を見ると当初は黒くなかったようだ。なんらかの事情で改修したのだろう。今の黒い姿もよいとわたしは思う。

1937年 安井武雄建築事務所 京都市下京区烏丸通七条下ル東境町  出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真5]セコム損保 京都ビル(旧東京生命保険 京都支社) 1937年 安井武雄建築事務所 京都市下京区烏丸通七条下ル東境町
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

05.建築家・棚橋諒の古建築への敬意あふれる「同朋会館」

七条通りを渡り、一本目を西に向かった同朋会館は西半分が増築で、増築部のバルコニーに丸柱がないのはその部分だけ鉄骨製だからだ。西側バルコニーは後補かも知れない。東側の玄関回りが基本形だが、丸柱が2階までしか達していない。つまり東大寺二月堂のような舞台造りを模倣しているわけだ。2階と3階とで手すりのデザインが違うことも、3階こそ舞台であることを意識しているからだろう。京大教授の棚橋は古社寺保存に長く携わった。彼の古建築に対する尊敬の念を感じる作品だ。

工期1959-1965年 棚橋諒 京都市下京区七条通新町東入ル新シ町121  出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真6]同朋会館 工期1959-1965年 棚橋諒 京都市下京区七条通新町東入ル新シ町121
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋