新NISAがスタートし、日本人にとって投資はいよいよ身近なものとなりました。その一方で、とても十分とはいえないのが、金融リテラシー教育です。なぜこのような状況にあるのでしょうか。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
新NISAスタートから3カ月以上も…いまなお「日本人の金融リテラシー」が十分とはいえない、哀し過ぎる事情【FPが解説】
日本の「金融教育」の進捗、正直いまひとつな状況…ナゼ?
資産所得倍増プランの一環として、2024年1月から新NISAがスタートしました。これを機会に投資デビューをされたという読者の方も多いのではないでしょうか。一方、2022年の4月からはすでに、高校で金融経済教育が義務化され、資産形成の授業が行われています。
新しいNISAが始まり、金融機関の顧客獲得競争が激しさを増す一方ですが、日本人の金融リテラシーの改善を後押しするはずの金融教育の進捗は、正直いまひとつだと感じています。筆者は仕事柄、多くの方の投資にまつわる相談に乗っていますが、現状において、若い世代の方々に資産運用の理解が十分進んでいるとは実感できません。
理由のひとつには、教育をリードする「金融経済教育推進機構」の稼働が遅れていたこともあったのではないかと思われます。
令和6年4月5日、正式に設立となったこの組織は(『金融経済教育推進機構の設立について』参照)、日銀の金融広報中央委員会が母体となって設立され、官民両方から理事や運営委員の人材を募り、金融教育の中心を担います。金融広報中央委員会がこれまで蓄積してきた教育コンテンツを活用し、新NISAやiDeCoなどについて、投資助言業の要件を緩和したアドバイザーの資格認定と教育・研修が行われます。
しかしながら、金融経済教育推進機構は、金融機関に中立の立場で適切な指導をしてくれるはずですが、アドバイザーに「どの商品を買ったらいいですか?」と質問しても、正しい答えは得にくいのではないかと、筆者は思っています。なぜなら、金融経済教育推進機構の理事や運営委員には、銀行や証券会社から天下りしてきたOBや業界団体の幹部などが参加するからです。
金融庁は、顧客本位の業務運営、つまり「フィデューシャリー・デューティー」を最優先する、といっている以上、金融庁が責任を持って投資助言業やアドバイザーを教育するのが理想ですが、多忙な金融庁はとてもそこまで手が回らないのが実情ではないかと思います。