少子高齢化による人口減少に伴い、空き家の増加が問題となっています。自分の死後、今住んでいる自宅がどうなるか考えたことはありますか?遺される家族にとって不動産は、資産としてのプラスの面だけでなく、相続問題や空き家の維持コスト等、マイナスの面もあるため、元気なうちに考えておかなければ後々家族に迷惑をかけることになるケースも……。そのようななか、自宅を生前に売却するという選択肢もあります。今回は、住みながら住宅を売却できる「リースバック」について、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかり氏が解説します。
「息子に迷惑をかけたくない」年金暮らしの70歳男性…自宅を“住みながら売却”したワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「不動産担保ローン」「リバースモーゲージ」「リースバック」の違い

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産をもとにお金に換える3つの手段、「不動産担保ローン」「リバースモーゲージ」「リースバック」の違いを確認していきましょう。

 

不動産を担保にして「お金を借りる」

まず、不動産担保ローンとリバースモーゲージの大きな違いは、リバースモーゲージには年齢制限があることです。

 

不動産担保ローンは、法人でも個人(年齢制限なし)でも不動産を担保に借り入れができる仕組みです。一方、リバースモーゲージは高齢者が所有する戸建てを担保に借り入れができますが、借入金の使用目的も生活資金や住宅関連費用等と、制限があるのが特徴です。

 

これだけ見ると制限のない不動産担保ローンのほうが借りやすいような気がしますが、実は、毎月の返済額が大きく変わってくるのです。

 

不動産担保ローンは、元本と利息を合わせて返済していかないといけないため、毎月の返済額が大きくなり高齢者にとっては大変です。

 

これに対し、リバースモーゲージでは、毎月の返済額は利息部分のみであるため負担は小さく、元本部分の返済については担保を設定した不動産を死後に売却する方法で行うため、基本的に相続人に大きな負担がおよぶことはありません。

 

なお、借り入れることができる金額も不動産評価額の50%程度と不動産担保ローンに比べると低いですし、金融機関によっては子ども全員(将来の相続人)の同意がないとリバースモーゲージが利用できないこともあります(不動産は売却し元本の返済に充てられますので、相続できなくなってしまうからです)。不動産評価額の100%を借りることができないのは、将来の不動産価値の変動(下落)リスクを考慮して借入枠が決められるためです。

 

不動産を売却して「お金を手に入れる」

不動産担保ローンやリバースモーゲージが不動産を担保にして「お金を借りる」のに対し、リースバックは不動産を「売却したお金を手に入れる」といった方法になります。

 

リバースモーゲージとリースバックは売却によって不動産をお金に換えるという点では同じですが、売却するタイミングが異なります。リバースモーゲージは死後に売却しますが、リースバックは先に売却します。また、リースバックは売却した資金ですから、使い道も自由になり、リバースモーゲージのような制限はありません。

 

リースバックは自宅の売却となるため、所有権が移転します。その後は「定期建物賃貸借契約」という賃貸契約を結ぶことにより、そのまま住み続けることが可能な仕組みです。住まいを売却してしまいますので、固定資産税等の税金や修繕費等の費用の負担はなくなりますが、住み続ける限り家賃の支払いを行わなければなりません。

 

また、家賃を払えば住み続けることができるとも限りません。家賃は値上がりになることもありますし、賃貸借契約には期間があるため定期借家契約で再契約を拒絶され、住み続けることができないケースもあります。普通借家契約が可能な事業者もありますので、事前にしっかりと説明を受けて、自分の意向と合っているかを確認しておきましょう。